ネタバレ注意
こういうレポート系ってゲーム中は読む気にならんのは何なんやろな。
暇なときに読めるようにスマホと連携とかして欲しいわ。
斑のカラス
ドミヌスの森に落ちていたメモ
昼間の記憶がおぼろなら、斑のカラスに囁くといい。
『我は救世主なり』
斑のカラス1
もし君が、親の顔を思い出せないようなら
もし君が、暗い海の夢ばかりを見るようなら
もし君が、昼間のことを思い出せないようなら
私の話は耳を傾ける価値がある。
いや、ぜひ知ってほしい。
君はおそらく救世主として選ばれし者だ。
斑のカラス2
1984年8月13日 アメリカではオリンピックが終わろうという時に、
私の人生も終わろうとしている。
私の死を確かめようというのか、あるいは死肉を食らおうというのか。
カラスどもが私の周りに集まっている。
図々しい奴などはすでに私の身体の上を歩き回っている。
いいだろう。このカラスどもに魔法をかけて私の記録を残そう。
数えたところカラスは14羽。すべてに魔力が及ぶだろうか ……
斑のカラス3
ドミヌスの森をゆく私には同行者がいた。
由良野理仁という初老の男だ。
彼は魔法使いだったが、自ら魔法を使うことには熱心ではなく、魔法の研究
者である自分を愛しているような男だった。
博識な男で、私の魔法の知識は由良野から得たものばかりだ。
私は彼の説を受け入れ、納得していたが、君はどうだろう。
斑のカラス4
由良野によれば我々魔法使いは魔法を使う代価を人生の断片
–記憶で支払っているらしい。
本来その記憶がおさまるべき場所に幻想世界との「接続子」が構築されるのだ。
その結果、私の精神に食い込んだ接続子から流れ込む魔力を消費して
我々は魔法を現実世界へと解放するのである。
では魔力はどこから来るのか。
そう、あの暗い海、マレ・デウスだ。
斑のカラス5
魔法使い諸君よ、案ずるなかれ。
魔法を使い続けたからと言って大切な思い出が消えるわけではない。
欠損するのは、日々の生活の、繰り返される些末な言動の情報だけだ。
一昨日の朝、家を出る時に施錠しただろうか。
アンワイズなら何かのきっかけで思い出すかもしれないが、
魔法使いは、おそらく、一生思い出せない。
その程度のことだ。ほとんど問題はないだろう。
だが、君が親の顔すら思い出せないのだとしたら少々事情は異なる。
君はおそらく私と同じ『救世主』の可能性がある
斑のカラス6
いや、正確にはまだ『救世主の候補』に過ぎない。
そして私は救世主になることなくここで朽ち果てる。
失敗の原因は生来の懐疑的な性格のせいに違いない。
加えて、真っ直ぐ未来だけを見つめて進むには、私は歳をとっていた。
何しろ魔法使いになったのは39歳。
救世主に相応しいのは心身共に若々しく、一途な気持ちを持ち、自分の夢を信じることができる青年、もしかすると少年、少女かもしれない。
もし君にその自覚があるのなら、
どうかこの愚かな男の話に耳を傾けてほしい
斑のカラス7
由良野が提唱する魔法実現の仕組みに私は当てはまらない。
由良野モデルと比較して記憶の欠損が大きいことを告白したところ
彼は大変強い興味を示した。
私は親の顔が思い出せない。
ドミヌスの森のことは親から聞いたはずなのに、その親
––父親であれ、母親であれ、顔が思い出せないのだ。
加えて、昼間の記憶が曖昧だ。ぼんやりしている。
代わり映えのしない日々の記憶があるだけだ。眠ると暗い海
––あのマレ・デウスの夢ばかりを見る。
長い夢だが何も起こらない退屈な夢。眠っている時間が長い。
君には幾つあてはまるだろうか
斑のカラス8
私の告白のあと、由良野は私の状況––つまり、記憶の欠損が日常生活に支障をきたすほど広範囲に及ぶ状況をこう解釈してみせた。
「他の魔法使いに比べてマレ·デウスとの接続子が大きい」
「接続子が大きければそれだけ多くの魔力が使える」
––これ以外の解釈、意味は考えられないと由良野は興奮していた。
「君は選ばれし者だよ、桑原くん」
斑のカラス9
由良野の見立てでは、私は救世主を目指す修行者であり、
森を巡って風門を解放して回る行為は、私の精神世界にある
接続子を完全に機能させるための下準備となるらしい。
風門は接続子のメタファーではないかとも言う。
そして、私のその修行に同行する由良野は水先案内人ということになるらしい。
すべての接続子を機能させる頃には、私自身は大部分の記憶を失ってしまうことが予想される。
そのわたしに救世主としての使命を伝え、導くことが由良野の役割であると
斑のカラス10
君の修行の旅は今、どのあたりだろうか。私などよりずっと真相に近づいているのではないか。
もし私や由良野の解釈が間違っていたら、どうぞ笑ってほしい。
さて、君は疑問に思っていることだろう。
救世主とは何か。何から何を救うというのか。
魔法使いをアンワイズから救うのか。
アンワイズをギルドから救うのか。
ではM.E.A.に入るべきなのか。
それとも正義はギルドにあり、真壁家の下で戦えというか。
どれもしっくりこない。
甲を救えば乙は救われない。それなのに救世主を名乗れるだろうか
斑のカラス11
私が選ばれし者だとすれば、そもそも誰に選ばれたのか。
ひとりだけ思い浮かぶ該当者はマレ·デウスにいるあの男
––あるいは女だ。
君は知っているだろうか?小舟ですべるように水面を進む不気味な姿。
死神のような姿。あれがドミヌスなのだろう。
思えば、確かにドミヌスは私を選んだ。
差し出された杖を私は掴んだ。
ドミヌスは私に何を求めているのか。なぜそれを語らないのか。
伝える方法はいくらでもありそうなものだ。
たとえば夢の中ではどうだ?
由良野はこう言う。真実を知らせないのは、君を守るためだと。
真相を知った私が力と可能性に溺れて調子に乗ってしまうことを想定して、
何も知らせないのではないかと
斑のカラス12
私の頭の中は疑問だらけだ。
ドミヌスの目的とは?
私に何を託したのだろう。
目隠しされたまま先の見えない道を目指すことなどできない性分だ。
すべて自分に任せろと微笑む由良野の顔さえも胡散臭く見えてくる。
私を支配しようとしている。
ついには由良野こそが倒すべき敵なのではないかと思うようになった
斑のカラス13
疑心暗鬼の果てに私は由良野を殺した。
抵抗され、私もダメージを負い、その結果ここで死ぬことになる。
愚かさの極み。結局真相には辿りつけないまま私は退場する。
愚直に風門を巡れば良かったのだ。
まっすぐにゴールを目指せば良かったのだ。
もし君が道に迷いそうになった時はわたしの愚行を思い出してほしい。
君は選ばれし者、救世主になることを期待されている者。
真実は修行の果てにしかないことを思い出し、大切に生きてほしい
斑のカラス14
私は由良野理仁。となりで死にゆく年下の友人桑原勝人の魔法に便乗し、後進に伝言を残そう。
桑原には隠し通したが私はレガシーだ。
魔法は貧弱だが魔法界を巡る情勢には少々詳しいと自負している。
救世主が戦うべき相手はコンスルである。コンスルが再び来日するのは今から40年後の2024年とされいる。彼らは当然のように日本の支配を試みるだろう。桑原が戦うべきだったのは、そして、君が戦うことを期待されている相手はコンスルだ。忘れてはいけない。
魔法使いが生きるには厳しい世の中だ。君は敵に囲まれているように感じているかもしれない。だが、本当の敵はコンスル。加えて、ドミヌスが自分の意図を明らかにしない理由はひとつしか考えられない。
それをコンスルに知られては君の命がないからだ。
思うに、コンスルはすでに日本に入り込んでいる。身を潜め、息を潜めてその時を待っている。その時とは、すべての魔法使いの接続子が消える日。
2024年5月24日。
桑原の死後もドミヌスは二の矢、三の矢を放つだろう。
もし君がその矢の可能性を自覚しているのなら目立たず、静かに生きろ。
そして力を蓄えるのだ。その日が来るまで
富樫大地レポート
その1
我が友、由良野海人へ
先日聞いた、渋谷租界への潜入捜査任務の依頼だが、受けることにした。
もちろん、前任のお前が渋谷租界で身バレしてどんな目にあったかは知ってるし、一歩間違えれば命がない、危険な任務であることは百も承知だ。
ほかならぬお前の頼みだ、聞いた瞬間に引き受けるのは決めていたし、むしろ依頼されて嬉しかったくらいなんだ。
即答しなかったのは、お前の横にいた情報部の奴らに、お前と俺が親友同士だって知られるのは、あまりよくない気がしたからさ。わかるだろ?
お互いにレガシーとはいえ落ちぶれた家系の、それも分家の出身。
大した魔力もない、共にM.E.A.でも冷や飯食らいだった俺たちが知り合ったのは、2年前の渋谷一斉取り締まりの時だったか。
突然現れたモンスターに無謀な特攻を仕掛けた木島班の新米隊員。
あいつを助けようとしたのがお前と俺、二人だけだったんだよな。
知ってるか、あの時の土合って新米、その後やらかして班を抜けたらしい。
まあ、あいつにゃエース率いる木島班は合わないって思ったぜ。
とにかく、お前に代わり潜入捜査の任務を受けられるのはうれしい。
いい情報を流すから、没落レガシーの意地を見せてやろうぜ!
次に会う時は、うまい酒を飲みたいもんだ。
2018年6月 平成最後の梅雨の雨音を聴きながら 富樫大地
その2
我が友、由良野海人へ
まずは、無事に渋谷租界に潜入したことを報告しておく
無事といっても、身体には結構なダメージを受けてる。
渋谷租界への亡命を演出するため、フォグの手前でM.E.A.隊員と一芝居打ったんだが、その隊員の中に例の土合くんがいてな、話しかけたらこの任務に彼のほうから志願したっていうんだ。
「手加減するなよ」って言ったのは俺だが、あいつ張り切りすぎやがって、ボコボコにぶちのめされたよ。
おかげで俺を救出してくれたギルドの連中もすっかり信じてくれたぜ。
あいつ「道玄坂の悪夢」っていわれてギルド内部で有名らしいな。
初めての渋谷租界は、明治時代のオープンセットかっていうくらいのレトロな街並みには面食らったが、街の人々は親切で、意外に気に入った。
まあ異常に行儀がいいのは、ちょっとカルト信者っぽいけどな。
末席とはいえレガシーだからか、今のところ俺の待遇は悪くない。
というか、来週には真壁総帥閣下に謁見できるらしいから、期待して待っててくれ。
2018年6月 志道竜之介のアイガス勧誘動画をBGMに 富樫大地
その3
我が友、由良野海人へ
友よ、派閥というものはどこにでもあるもんだな。くだらない。
先日言ったように、真壁蒼空総帥との謁見を済ませてきた。
真壁蒼空という男は、あくまで第一印象だが純粋な人間のように感じたよ。
もっと疑われるかと思ったが、じっと見つめた後で笑ってこう言いやがった。
「お前が富樫大地か …… 蒼空と大地、案外気が合うかもしれんな。」
破顔一笑というやつだな、ありゃあ間違いなく人たらしだ。
とまあ蒼空との謁見は問題なかったんだが、問題はそのあとだ。
俺と入れ替わりに海藤護楼とその息子無限が怒鳴り込んできたんだ。
大声がドアの外にまで聞こえてきたよ。
「志道竜之介には我慢ならん!」だとさ。
海藤家といえば、ギルドの対外的な実戦部隊を長年取り仕切っているが、内務を担当する志道家とは代々仲が悪い。
それがここ数年はますます悪くなっているようだ。
とまあここまではお前からも聞いていたことだ。
俺の任務はその亀裂を調べることだってのは承知している。
真壁蒼空からは近いうちまた呼ぶだろうって言われたよ。
また動きがあったら報告する。
2018年7月 渋谷租界の涼しい夏に感謝しつつ 富樫大地
その4
我が友、由良野海人へ
真壁蒼空には、あれからすぐに呼ばれたよ。
ついさっき帰って来てこれを書いている。
「現実の渋谷への帰還、それが我々日本魔法ギルドの悲願だ。」
開口一番そう言われた。
「もちろん、その時は魔法使いの管理は全てギルドにまかせてもらうし、魔法使いの自由も全面的に認めてもらう。それが絶対条件だ」と続いてな、これには「それは、M.E.A.が認めないのでは?」と返すしかなかった。
真壁は、それには何も答えなくて、その後は愚痴ばかり聞かされたよ。
やつが言うには悲願を果たすにしても、まずはギルドの内部分裂の種をなくすことだって言ってな、実際真壁は板挟みになって苦労してるようだったぜ。
俺は、志道と海藤がいなくなって、この真壁蒼空だけを相手にするなら、
M.E.A.とギルドの和解だって夢じゃないって、そう思えてきたよ。
別れ際、あいつにこう言われたよ。
「積年の悲願を果たすため、君の働きを必要としている」ってな。
俺はまさか潜入捜査官であることがばれたかって、一瞬ヒヤッとしたぜ。
その後すぐに、勘違いだとわかってホッとしたよ。
なにしろレガシーメンバーの定例会議に出るよう言われたんだからな。
その会議に出席したら、すぐに報告するから待っててくれ。
2018年7月 渋谷ギルドの少し音痴なセミの声に驚きながら 富樫大地
その5
我が友、由良野海人へ
レガシー定例会議は大荒れに荒れたよ。
粛々と進んでいた会議が一気に沸騰したのは、やはり海藤護楼の発言だ。
「海藤家主導による大規模渋谷侵攻作戦の決行を許可願いたい。」
提案書をばらまくなりいきなりこうだ、しかも提案書の表紙には「作戦立案·総司令官海藤無限」と書かれている。
自分の息子に手柄を立てさせて、権勢を高めようという下心が丸見えだよ。
それに対して志道は「かように粗雑な提案は却下だ」なんて煽りやがる。
海藤は「総帥のご決断や如何?」と真壁に詰め寄り、志道がそれを制する。
蒼空が最も恐れていた展開になったんだ。
しかし蒼空には「認めるわけにはいかない」というほかなかった。
海藤の親父は退席、それに乗じて志道は海藤家への問責を取り付けた。
蒼空にとっては最悪の展開さ、会議の後あいつはこう言ってたよ。
「このままではギルドは分裂してしまう。ギルドが弱まれば、M.E.A.に対抗できなくなるだろう …… 」ってな。
友よ、俺が思うに今はこのギルドの混乱を刺激するべきじゃない。
収拾がつかなくなる可能性すらある、と報告してくれないか。
2018年8月 風雲急を告げる渋谷租界の片隅から 富樫大地
その6
我が友、由良野海人へ
友よ、ついさっき海藤護楼が謀殺された。
そう謀殺だ、海藤邸門前で「逆賊死すべし」と叫ぶ暴漢に襲われたんだからな。
その場で自害した暴漢は内務局の職員だったそうだが、志道は関与を否定。
しかし渋谷租界の中では、首謀者は志道内務卿だという噂で持ち切りだ。
でも俺は、ひょっとしたら違うんじゃないかと思ってる。
こいつはM.E.A.の、堂上敬三副長官の陰謀なんじゃないかってな。
だってそうだろ?
昨日の手紙にあった堂上敬三から来たっていう指令、ありゃー体なんだ?
海藤無限に密書を渡せだって? 偶然にしちゃタイミングが良すぎるぜ。
違うって思いたい、お前の本部内での立場もわかってる。
でもこればっかりは、どうしても、そう勘ぐってしまうんだ。
それに、今渋谷租界は戒厳令下も同然の状態で、しかも海藤無限はまさに渦中のど真ん中って存在だ。
こればっかりは、渡すのは難しそうだ。 それに渡したくないというのも本音だ。
2018年8月 辞書で「火中の栗」の意味を調べながら 富樫大地
その7
我が友、由良野海人へ
友よ、例の密書はなんとか海藤無限に渡すことができた。
お前ときたら、何通手紙を出すんだ?/斑のカラスが哀れに思えて来たぜ。
それに堂上敬三だけならまだしも、奴の妹小夜子にまでお前が追い詰められてると聞いたら、俺も放ってはおけないからな。
無限坊ちゃまに密書を見せてもらったが、中身はやっぱり海藤無限の引き抜き、それも配下の部隊ごとっていう大規模なものだったな。
無限の返事はたった一言、「応」だとさ。
これで蒼空の願いは空しく破れることが決定だ、最悪の形でな。
実は手紙を渡した後、無限にギルドにとどまるつもりはないか聞いたんだ。
手紙を渡すまでが任務だし、それはいいだろ?
でも無限の答えはこうだったよ。
「妙なことを言う間者だな、自由に戦えんギルドにとどまるつもりはない。
M.E.A.の全実戦部隊を委ねるという敬三殿の申し出、断る理由はねえしな。」とまあ、けんもほろろさ。
俺は甘すぎたのかもしれない、この件はもっと前から動いていたんだろう。
友よ、海藤無限には、そしてなにより堂上敬三には気を付けるんだぞ。
2018年8月 今日もどこかで起こっている暴動の声を聴きながら 富樫大地
その8
我が友、由良野海人へ
ついさっき、蒼空に呼ばれて会いに行った。
会うなりいきなり「海藤無限に会ったそうだな」って言われたよ。
まあそこまでは想定内、だから想定通りの言い訳を言って取り繕ったさ。
「海藤を説得しに言った」だの「スパイならとっくに逃げてる」だの、な。
一番想定外だったのは、あっさり蒼空が追及しなかったことかもしれない。
そういえばあいつ、お前のことも言ってたぜ。
「お前が来る少し前、由良野というM.E.A.の潜入捜査官がいた。海藤がM.E.A.と繋がったのは、そいつの手引きだったかもしれない。」だとさ。
俺は「それだ、由良野は富樫より名門、海藤も話を聞くだろ」って答えたよ。
でもその時、蒼空は気になることを言ったんだ。
「いや対等どころか、由良野に比べれば海藤の方こそ名門とは呼べん、だから何も知らずに大規模侵攻などという愚かな作戦が立案できるのだ。」
なあ、お前の家系ってもしかしてすごいのか? 蒼空は続けて「今だけは、ギルドの分裂も、M.E.A.との衝突も回避したい。海藤をなんとしても引き止めなくては。富樫大地、力を貸してくれ。」って言ってたよ。
俺もそんな事態を避けるためなら、力を貸してやりたいんだが ……
やっぱり堂上は、海藤の引き抜きを決行するのか?
友よ、現実とアナザーと、どっちの渋谷も火の海になるぞ?
2018年9月 空と海のはざまで悩みながら 富樫大地
その9
我が友、由良野海人へ
友よ、堂上敬三副長官の決断はやはり、海藤無限引き抜き決行なんだな。
それも配下の兵隊ごと、成功すればギルドの戦力は大きくそがれる。
そう、真壁蒼空が最も恐れていた事態が実現することになる。
しかしお前には言っておくが、海藤無限、あれはM.E.A.が考えてる以上にやばい劇薬だ。
奴が持ってる毒性は組織をむしばむ。今回ギルドがそうだったように、引き抜いたM.E.A.も無事で済むとは思えん。
すぐに立場を逆にしての徹底抗戦論をぶち上げるだろうぜ。
久しく安定していたM.E.A.とギルドの関係は、決定的に決裂することになる。
そして戦いになれば、M.E.A.だって大きなダメージを受けるだろう。
先日の新米、土合みたいな若者が、大勢命を危険にさらすんだ。
わかってる、こいつがお前の立場では覆らないレベルの決定だってことはな。
心配するな、命令には従うさ。
俺は初めて、この任務を受けたことを後悔し、この任務を持ち掛けたお前を、恨み始めている。
依頼がお前からじゃなかったら、とっくに逃げだして、こんな思いをしなくて済んだからな。
友よ、これだけは忘れないでくれ、この決断は間違ってる。
2018年9月 最初にかけ間違えたボタンを探しながら 富樫大地
その10
我が友、由良野海人へ
おめでとうとでも言おうか?海藤無限引き抜き作戦は大成功だったな。
それも、海藤家に従う者たちを大勢引き連れてのな。
海藤無限の逃走をサポートするために、M.E.A.の精鋭部隊が境界の森へ大規模な攻勢をかけ、迎え撃つギルド攻撃部隊の一部を裏切らせる。
そのまま後はなし崩しに現実の渋谷に逃走、見事な作戦だ。
一体何人のM.E.A.隊員が殉職したんだ?
でも、海藤とギルド部隊の一部が手に入ったから、損得勘定で言えば得をしたってわけか?
まったく堂上敬三副長官の戦略ってのは大したもんさ。
殉職した隊員もあの世で拍手を送ってるだろうぜ。
で、俺は今も渋谷租界に残ってる。
蒼空にはもちろんブチ切れられたがな、殺されはしなかった。
怒りの矛先はM.E.A.、いやそれ以上に堂上敬三だ。
すべてを失ってでも、打倒M.E.A.、打倒堂上家の悲願を果たすといってた
「このことを百夜の子孫に伝えよ!そのために貴様を生かしてやる!」だとさ。
俺が今残ってるのは、M.E.A.とギルドの全面対決を見たくないからなんだ。
2018年9月 燃え上がる渋谷を幻視しながら 富樫大地
その11
我が友、富樫大地よ
海藤を引き抜いてからはや一月、お前の忠告したとおりになった。
あれほど忠告を受けておきながら、生かせなかったこと、申しわけなく思う。
海藤家とその一派は、あっという間にM.E.A.実戦部隊を掌握。
そのうえで、M.E.A.にいるギルドの潜入工作員をすべて暴露した。
それが、かなり上層部にまで及び、海藤指揮下の実戦部隊の実力行使により更迭された。
潜入工作員と断定された者の末路は、お前にもわかるだろう。
これにより、わずか数日でM.E.A.の組織はガタガタになった。
それを埋めるように、海藤一派が入り込みつつあるというわけだ。
海藤無限本人にはまだ役職こそついていないが、正式に組織に入れば堂上敬三とその妹小夜子に次ぐナンバー3になることはもはや確実だ。
これは正直に言って、想像をはるかに超えるスピードだった。
そして、どうやら海藤にとって、私とお前は邪魔な存在らしい。
私を名指しで、真壁蒼空との内通の嫌疑があると言い出した。
私がギルドの潜入工作員たちと同じ運命をたどるのは時間の問題だろう。
そして私の次はお前が危ない。
友よ、決して戻ってくるんじゃない。
2018年10月 お前の永遠の友人 由良野海人
その12
我が友、由良野海人へ
海藤引き抜き作戦の直後に送った手紙以来、お前の返信が来ていない。
そして、さっき俺のもとに来た斑のカラスが傷ついていた。
これは、やはり何かあったという事なんだろうな。
この手紙も、お前が読むことは無いのかもしれないが、それでも書くよ。
きっと無駄になることはないはずだ。
俺はあの後、もう一度真壁に談判しにいった。
「戦いになれば、若者たちの血がたくさん流れるんだぞ」ってな。
その時、真壁蒼空が一瞬悲痛な表情を浮かべたのを俺は見た。
でもすぐに、まるで独裁者のような鋼鉄の表情になってこう言ったんだ。
「すべては堂上敬三が仕向けたことだろうが!」
それっきり何も言わなくなって、次に口を開いたのは俺が帰る時だった。
「M.E.A.を裏切り、俺につく気はないか?」とな。
その声は心なしか少し震えていたけど、俺はこう返してしまった。
「悪いな、渋谷にはまだ、助けなくちゃいけないやつがいるんだ。」
それを聞いたあいつはもう独裁者の表情に戻っていたよ。
それが真壁との最後の会話だ。
今から渋谷に戻ってもおそらくお前には会えないんだろう。
それでも帰る、必ず約束を果たしにな。
2018年10月 お前の永遠の友人 富樫大地
清川信三郎の日記
1984年5月12日 ギルド入り
1984年5月12日(土)
午前中に渋谷租界へ到着
午後、真壁蒼天宅へ挨拶、ルブルム工場勤務を命じられる
そこで現工場長の虹江田真威人の不審な動きを調査する命を受ける
·ルブルムの品質が低下している原因を調査する
·原因を突き止め報告すれば工場長の座を約束する
·工場への勤務は来週月曜日から
工場長になれば、工場の設備を好きなだけ使って研究ができるらしい
→二つ返事で承諾
※虹江田工場長は、現在病に臥せっている真壁天蓋総帥の信任が篤い
それを笠に着て専横を極めている、行動には十分注意すること
1984年5月17日 工程調査
1984年5月17日(木)
工場勤務四日目
昨日までの三日間は資料の確認を命じられた
・ルブルムの原料は以下の通り
レプリカの血液25%以上 ダムドの血液75%以下
・レガシーの血液は強すぎるため使用厳禁
・原料を混ぜ合わせたのち、加熱などの工程を経て完成
資料を確認し工程を把握後、直接虹江田に品質低下の件を質問
意外にも全工程を確認させてくれた
・原材料の比率→問題なし
・その後の工程→問題なし
※虹江田は必ずウソをついている
1984年5月22日 虹江田の不正
1984年5月22日(火)
虹江田の不正を発見
・加熱工程のパイプに触れたところ、温度が想定より高く感じた
・温度計に細工がしてあり、約5度低い温度を指すようになっていた
→ルブルムは高温により劣化していた
虹江田を問い詰めるが、総帥の権威を笠に着て不正は一切認めない
そこへ次の一報が入る
<真壁天蓋危篤、回復は絶望的>
後ろ盾を失った彼は一転して言い訳を始める
日く、蒼天はルブルムの流通量を増やしダムドを急増させようとしている
日く、そうなれば魔法使いへの風当たりはさらに強くなる、と
確かに一理ある、だが蒼天が次期総帥になる以上、選択肢は決まっている
※本日「虹江田数値偽装」の報告書を提出した
1984年5月24日 真壁蒼天ギルド総帥就任
1984年5月24日(木)
<真壁天蓋総帥崩御>そして<真壁蒼天総帥就任>
報告も兼ねて渋谷租界に戻り、蒼天に謁見
蒼天から昨日嫡男が誕生した(「真壁蒼空」と命名)との報告を聞く
その後当面の指令を受ける
・虹江田工場長は更迭、当面は清川を工場長代理とする
・清川工場長代理体制の下、ルブルムのさらなる改良を図る
→基準はダムド発症率の倍増
・ルブルムの改良達成をもって、清川を工場長に昇格させる
※ルブルム製造の目的がダムドの増加にあったのは誠であった
やはり例の噂は本当だったのか?
1984年5月25日 レガシーの血を一滴
1984年5月25日(金)
工場に戻り、ルブルムの改良に着手
・レプリカの血液の比率を倍増 →ダムド発症率に影響なしで失敗
・レプリカの血液の比率を三倍 →わずかに発症率上昇を確認
→しかし倍増には程遠く、比率の上昇による改良は断念する
<レガシーの血液は強すぎるため使用厳禁>
上記原則を破り、渋谷租界でもらっておいた真壁蒼天の血を試す
・レガシーの血液を25%使用
→これまでに見られない激しい反応
→人間の形状をとどめないほどに変形 → 被験者死亡により中断
※今回の実験は失敗だが、レガシーの血液には見込みあり
1984年5月30日 失敗の日々
1984年5月30日(水)
レガシーの血液による実験を開始して6日目、検証したレガシーを記す
志道家、海藤家
→ダムド発症率は倍以上の増加をマーク
しかし発症したダムドは全て凶暴な性格になったため失敗
新崎家、須田家
→両家ともダムド発症率が低すぎるため失敗
國府家
→ダムド発症率は倍近くに上昇
しかし発症後自分の姿に絶望し、自害するものが多数いたため失敗
※全て何らかの問題を抱えている
1984年6月6日 清川の血をたった一滴
1984年6月6日(水)
ギルド内のレガシーでの実験はことごとく失敗
失敗の中から一つの仮説を見出す
・発症したダムドは血液を使用したレガシーの性格を引き継ぐ
失敗している現状とこの仮説を持って蒼天に報告
蒼天より、清川家の血を試してみては、との提案を受ける
半信半疑試してみたところ、発症率、ダムドの状態共に問題ないレベル
(私の平坦な性格が功を奏したか?)
※量はごく少量、一滴程度が適量であることを確認
大規模な臨床実験へと移行する
1984年6月8日 恐ろしいダムド
1984年6月8日(金)
大規模な臨床実験も順調に推移していたが
真壁蒼天総帥を呼んでの公開実験中に事件が発生した
ごく少数のダムドが人間のシルエットにとどまらないほどに変形
→完全にモンスター化(ダムドⅢ型と命名)
真壁蒼天はその現象を素晴らしいと称賛
「これによりマレ・デウスは満ちるだろう」と発言した
→コンスルと交わしたという約束は本当だった?
実験は成功となり、私が工場長に就任することが決定
その直後志道内務卿の命令書が到着
→虹江田の私への異議申し立てが受理されたという
※明日ルブルム工場にて、虹江田との決闘を行う
1984年6月9日 虹江田との決闘
1984年6月9日(土)
虹江田との決闘は私の勝利で終わった
工場を取り込んでの虹江田の変身、しかし工場はすでに私によって改修されており、その変化で虹江田の身体と合わなくなっていたのが勝因だった
→工場を取り込む変身は非常に参考になった
虹江田は最後に何度も「これでいいのか清川」と言いながら死亡
→研究が続けられれば問題ない、と返答した
決着後、真壁蒼天総帥と今後について会話
・発症したダムドは血液を使用したレガシーの性格を引き継ぐ
この仮説に関して、引き続き研究する許可を取り付けた
※最後に虹江田の残留血液をライブラリーに保管
仮説が正しければ彼ともいつか、マレ·デウスの海で会えるだろう
1995年5月16日 削除フォルダから復旧
1995年5月16日(火)
11年ぶりに日記を記す
この10年、工場の管理をしながらレガシーの血液の研究を続行
最近、この工場があるアナザーが大きくなっていることを発見した
→アナザー自体がレガシーの血液に反応している?
·アナザーは空間であると同時に、ダムドのような生物なのかもしれない
この仮説を立証するため、渋谷に多数ある小さなノラアナザーでの実験を始める
仮説が正しければ、ノラアナザーは大きく成長するだろう
※まずはレガシー血液の確保から着手
2004年5月24日 削除フォルダから復旧
2004年5月24日(月)
ノラアナザーの実験開始から9年が経過
実験に使用したノラアナザーは全て大きく成長
清川(私)の血液を使用したアナザー
→私が入ると私の思考に共鳴する思念のようなものを感じる
志道家の血液を使用したアナザー
→私が入ると憎悪、威嚇、恫喝の思念を感じる
他のアナザーもすでに思念体のようなものを形成しているようだ
→このまま実験を続ければ肉体の形成も?
これ以上の実験に危険を感じたため、やむなく封印を決定
※しかしどの血液もギルドを支える血族であることに変わりはない
その血筋が断たれた時には、封印が解けるようにする
ドミヌスの記憶
ドミヌスの記憶1
静かなる海 ……
すべての魔力の源 ……
生と死の狭間 …… 人と魔法使いの境界 ……
波も立たぬはずのこの水面に
急激に穢れが混じり始めた ……
このままではいずれこの海も濁り澱んでしまうだろう ……
対策を立てなければ ……
穢れを宿すものが増えたならば穢れなき血を増やすか ……
…… また一人流れ着いた
魔法の素質があればいいのだが ……
ドミヌスの記憶2
魔力を持つ素質のあるものがここに流れ着く
私の杖を掴めば、魔力がもたらされる
だが、魔力を拒み杖を掴まぬ者も少なくない ……
さあ掴め ……
怯えるな、ここは死の間際に見る夢のような場所だ
私から逃げてもどこへも繋がらぬ ……
ダメか ……
漂うだけでは陸へは辿り着けない
焦り進めど無駄だ ……
心の弱いものでは生かしてもまた死ぬのみ ……
素質あれど生への執着無しでは無意味 ……
陸へ還した後にも働いてもらわねば ……
ドミヌスの記憶3
穢れに対抗すべく魔法使いを増やしてきたが ……
あまりにも海への浸食が早い ……
ここに流れ着く者を全て陸に還したとて
この穢れが広がる速さには追いつけまい ……
陸へ干渉する術を持たぬ管理者にこれ以上出来ることはない ……
この海が穢れた魔力で満たされる日を
ただ待つしかない ……
…… いや、一つある
しかしこれは賭けとなるだろう ……
ドミヌスの記憶4
どうやら浸食はいくらか抑えられるようだ ……
しかしこの方法も長くは持つまい ……
この身一つ、この魂一つ、この記憶一つ ……
少しずつ …… 削っていくしかない ……
なるべく長く …… 留まるように ……
全てを無くすとどうなるだろうか ……
いや、今はそれを考えるときではない ……
この海の均衡を保つ ……
そのために私の存在はあるのだから ……
ドミヌスの記憶5
ゴホッ ……
ついに私の身体にも影響が出始めたか ……
悠長にはできない ……
たとえ、来るあの時までこの海を維持しようとも
そこで力尽きては意味がない ……
この身はもはや尽きゆくもの ……
新たな器を探す必要がある ……
ドミヌスの記憶6
ゴホッ …… ゴホッゴホッ ……
器はまだ見つからない ……
これまで数多の魔法使いとなる魂を見てきたが
それでもこの役目に見合うものは少ない ……
少し前に見込みのある者がいたが ……
ここまで至る少し前に、疑心に苛まれ、
友を殺し道を違えてしまった ……
あの者は惜しかった ……
ゴホッゴホッ ……
長きにわたり、この海と繋がっていたからだろうか ……
穢れの影響が私にも現れている ……
急がねば ……
ドミヌスの記憶7
ゴホッ ……
ようやく見つかった器だ ……
あの者が成熟するまでは、なんとしてもこの海を保とう ……
約束の日はもうすぐだ ……
もはや屍のようなこの身も、そこまで持てばいい
レナティスを越えれば …… きっと ……
ドミヌスの記憶:ツムギ
華々しい人生の途中だったろう ……
ダムドやモンスターでもなく、魔法使いでもなく、
ましてや自警団でもない ……
ただ日常の、ただの同じ人間に追われ、逃げ、
運悪く足を踏み外したか ……
将来を夢見る心、生に強い執着を感じる ……
やり遂げるためならば他者をも欺くほどの成功への渴望も ……
不安定ではあるが、生への執着があれば生かしてもいい ……
この芯に強い心であれば魔法も扱えよう ……
ひとつ懸念は、生還の後 ……
今や魔法への風当たりは厳しい ……
絶望につけ入れられなければよいのだが ……
ドミヌスの記憶:松岡
ダムドに喰われて死んだか ……
怒り、後悔、憎悪 ……
ここまで膨らみ滾るほども珍しい ……
海の穢れは広がるばかり ……
激情のまま穢れを蹴散らすことができればあるいは ……
あまりに短絡的すぎるのが難点だが ……
多少の愚かさは目をつぶろう ……
矛先を求めよ
鬱憤を晴らす機会を与えよう ……
穢れを減らせ …… その心の向くままに ……
ドミヌスの記憶:ニカ
まだ幼い ……
この者を生かしても、またすぐ死ぬことになるだろう ……
今の陸は魔法使いには生きにくい ……
…… だが、残す肉親に心を砕くか
幼き様で殊勝なことだ ……
いや、あの者もこのくらいの年頃だったか ……
…… 年も近い、よき理解者になるだろうか
あの者は想定よりあまりにも孤高を求めすぎる
あれではこの先の孤独に耐えられまい ……
この少女が、この先歩みを共にすれば
孤独を理解し、乗り越える力となるだろう ……
幼き身には死した現実も蘇った後も厳しかろうが
せめて異を己が力とする術を持たせてやろう
行け ……
ドミヌスの記憶:鵜飼貴一郎
水難によって流れ着くものは分かりやすい ……
死に際にもがき苦しみ …… この海でも同じく ……
ここは魔力の溜まる場所、ただの川や海とは大きく異なる ……
肺に溜まる水も、口を塞ぐ波も …… この海にはない ……
…… いや、逆もまた然り
この魔力の海に流れはない ……
生きるものたちの陸には、時の流れ、場の流れがある ……
この者はあらゆる流れを読み、舟を漕ぐことが得意のようだ ……
船頭ではなく、ただ漕ぎ手としてか …… それでもいい ……
陸で苦しむ魔法使いたちが、少しでも息がしやすくなれば ·····
ただの願望だ …… だが、悪くない ……
私は魔力の海の管理者 …… 魔法使いに寄り添うものだ ……
ドミヌスの記憶:土合正義
屈強な肉体に恵まれ、強靭な精神にも恵まれたか ……
他者への情は厚いようだが ……
それゆえに亀裂を生み、衝突が多くあったのだろう ……
理想とする形を強く信じ、そうでなければ愚と評す
信念があることは魔法使いとしては望ましい ……
だが、他者への押しつけは暴力も同然
拳が出るならなおさらだ ……
力の向き先が穢れの元たるダムドに向けば、
あるいはこの者も大いに役立つ可能性もあるだろう ……
さあ力を使え …… 穢れを少しでも殲滅せよ ……
ドミヌスの記憶:瀬尾玖音
孤独を理解するものよ ……
その身に宿す病と向き合い、希望と絶望を繰り返すものよ ……
自由に行動できる身体を得れば何とする ……
己の欲望のままに他者を排しても、希望を手に入れるか ……
その信念は強かろう ……
あの者とわずかに重なるその精神
似通った者であれば、孤独を共有するだろうか ……
孤独を自覚し、理解を促す引き金となれ ……
お前にひとときの自由を与えよう ……
ドミヌスの記憶:西島佐理
ああ、これはいい ……
激しく燃える憎しみさえも握りつぶすような強い意志 ……
他者を救う道を進むものよ ……
さあ、この杖を取れ ……
まだ死んではいられないはずだ ……
……
…… 期待外れか
恐れを抱けば生き残ることはできない
また次を探しに ……
いや、生に賭けたか …… いいだろう
強く鋭く輝くその眼光のごとき魔力 ……
忍び寄る魔さえも切り裂き道を開くだろう ……
あの者を律し、導いてみせろ ……
ドミヌスの記憶:鯨井三千郎
ゴホッ …… ゴホッ ……
穢れに落ちたものが聖杯を持っているとは
ギルドの管理もずさんになったものだ ……
…… ここまで辿り着いたその覚悟に免じて
お前の話を聞いてやろう ……
……
愛を教え、孤独を教え
己の命を懸けて、あの者の居場所を ……
愚かなる民衆から疎まれぬ世界を作ろうというのか ……
己の好奇心で穢れに落としたその身を
今度は他者のために捧げるとは ……
実に愚かで …… 人間らしい ……
…… ゴホッ ……
いいだろう、私にも時間がない …… お前の望みに応えよう ……
ドミヌスの記憶:霧積真凛
限界だ ……
魔力の源泉は穢れが溜まり、澱んでしまった ……
かつての面影はもはやない ……
ゴホッ …… ゴホッ ……
この身だけでは抑えきれず、
陸にも影響が出始めるのも時間の問題 ……
もはやこれまでかと考えていたが ……
幸いなことに、新たな器たりえる存在がこの海に辿り着いた ……
しかし、器とするにはまだ早い ……
すべての魔法使いの根源たるこの地を管理するには
膨大な力と孤独に耐えうる精神が必要だろう ……
時は必ず来る ……
それまではしばしお前の記憶を贄としてこの身を保つとしよう ……
我が半身よ ·····
隊員査定
西島佐理
・氏名 :西島佐理
・階級 :巡査部長
・性別 :女性
・生年月日:2001/9/6
【メモ】
姉の死がモチベーションの源になっていることは明らかだが、その影響もあって勤務実績は非常に優秀
向上心もあり、魔力もレプリカとしては突出している
しかしその向上心がこちらにとって迷惑なところもある
西島巡査からは何度もルブルム撲滅の提案がある
しかしあいまいな返答をすることしかできない(まだ、マレ・デウスの水は満ちていないようだ)
以上のように、基本的には優秀な隊員だが、あの制服改造はいただけない
聞けば規程の範囲内とのことだが、そんなことがあるだろうか?
広報課あたりの関与があるのかもしれない→要確認
鵜飼貴一郎
・氏名 :鵜飼貴一郎
・階級 :巡査部長
・性別 :男性
・生年月日:1995/6/30
【メモ】
勤務実績に目立ったところはなく、報告書や面談等でのアピールも乏しい
しかし現場の班長や周辺の隊員からの評価が非常に高い
どうも本人は目立つことを避けているらしい
責任をとる立場になることを避けているとの報告もあり
以上のように、能力的には優秀な隊員だが、時に辛辣な毒舌を吐くとの報告あり
組織の批判や、私への悪口など、士気に関わる言動が無いか注意する必要あり
土合正義
・氏名 :土合正義
・階級 :巡査長
・性別 :男性
・生年月日:1992/5/5
【メモ】
M.E.A.の始末書王
警備会社時代に強盗に襲われ、その際の魔法使用により警備会社はやめることになったが、
その事件によってM.E.A.の目にも止まった
私は性格に難ありとみたが、人事部の推薦により入隊させることになった
近接戦闘で当たりの強い攻撃力、現場ではこういうタイプが重宝するとのことで、
こういうタイプを入れないと魔動から不満の声が上がるそうだ
その後部署を転々としているところから考えて、私の見立てのほうが正しかったのではないかと思う
松岡大地
・氏名 :松岡大地
・階級 :巡査部長
・性別 :男性
・生年月日:1997/4/2
【メモ】
M.E.A.への忠誠心は高く、信頼できる隊員
しかし実力不足の感が否めない
班長の任を与えたのは、人員不足であることと、勤務態度に非の打ち所がないこと、
この2点に尽きる
つまりは消去法の人事だ
ギルドとの戦いがますます激化していく中でのこの人事は厳しい
無理だとは思うがギルドとの話し合いを進めておくのと、他の外部協力者を
探さなければならないだろう
たとえば渋谷オウルなど
城崎竜二
・氏名 :城崎竜二
・階級 :班長(殉職)
・性別 :男性
・生年月日:1980/1/17
【メモ】
私と同い年だったため、正直やりにくかった
しかし、この年齢での殉職というのはやはり早すぎる
西島佐理の度重なるギルド攻撃の提案に関して、彼には何度も注意をするよ
う伝えていたはずだが、注意など一度もしていないことはわかっていた
しかしそれも今となってはいっても仕方のないことだ
海藤隊長を除くと、彼が現場の最年長になっていた
若手隊員からの信頼も厚く、M.E.A.の現場を長年支えてきた功績は計り知れない
遺族への補償にかんして、規定からの増額を指示したが、奥さんが固辞して
いるとの報告があった
あの奥さん、ちょっと苦手なんだよな ……
海藤無限
・氏名 :海藤無限
・階級 :対魔法魔法機動隊隊長
・性別 :男性
・生年月日:1978/8/8
【メモ】
ギルドから電撃的にM.E.A.に寝返ってからはや6年
いまだにこの人には慣れない
ギルドの重要な機密が手に入ることを期待していたが、結局たいした情報は手に入らなかった
何より頭がいたいのは、猛将気取りの指揮スタイルだ
時代錯誤のスパルタ式訓練に、根性論の任務遂行
彼が隊長になってから、隊員の損耗率が急増しているとの報告があった
早くなんとかしないと、私が育てたM.E.A.が壊されてしまう
オウルメンバー報告書
鯨井三千郎
・氏名 :鯨井三千郎
・階級 :渋谷オウル設立者
・性別 :男性
・生年月日:1991/12/25
【メモ】
ノラ魔法使い支援団体を標榜する渋谷オウルのリーダー
調査によればダムドらしいが、ルブルムの使用はもちろん、購入、所持の形跡もない
可能性として考えられるのは、オウル所属の魔法使いの血液使用だ
そしてそれは間違いないだろう
確認しただけで、活動を開始してから3年以上経過しているが、ダムドの病状は進行していない
仮に魔法使いの血液を使用しているとして、並みの魔法使いの血液であれば
ルブルム以上に進行が進んているはずだ
だからレガシーレベルの血液を使用しているのは間違いない
だとすると血液の出どころは ……
深町最愛
・氏名 :深町最愛
・階級 :渋谷オウルメンバー
・性別 :女性
・生年月日:2004/3/3
【メモ】
渋谷オウルの古参メンバーにして鯨井三千郎の右腕
3年前に事故死したT.Rebellion社長深町楯生の長女だ
母親は深町葉月、旧姓は由良野、因縁の由良野だ
実のところ、深町葉月は家出同然で由良野家を出たらしく、
深町最愛には過去の因縁を伝えていない可能性もある
しかし深町最愛が家を出てからのT.Rebellion社内人事、渋谷署の田中と森という刑事の報告などから考えて、既に知っている可能性が非常に高い
実を言うとこの件は少し残念だ
深町最愛がいなければ、対ギルドとの戦いにおいて、渋谷オウルとの共闘が
現実味を帯びてくる
5月20日追記:深町最愛がオウル離脱中との情報あり
かねてよりの作戦を決行するのは今かもしれない
目黑仁香
・氏名 :目黑仁香
・階級 :渋谷オウルメンバー
・性別 :女性
・生年月日:2006/4/16
【メモ】
渋谷オウルのメンバー
渋谷最強の召喚士との異名があり、渋谷中の自警団を倒すことで小銭を稼いでいるようだ
強力な召喚士はM.E.A.でも珍しく、人事部や隊員の間からは彼女をスカウトせよとの要望もある
しかしそれは難しいと考え却下した
調査によると彼女の母親、目黒夏子はダムドになっており、しかもすでにギルドが回収済らしい
とすれば、彼女は近いうちに最も親しい肉親との別れを経験する可能性が高い
しかもM.E.A.隊員として最もよく対応しなければならない、ダムド、ギルドが絡んでいる
冷静な判断ができるとは到底考えられない
それを乗り越えることができたら、強力な魔法使いになるとは思うが ……
霧積真凛
・氏名 :霧積真凛
・階級 :渋谷オウルメンバー
・性別 :男性
・生年月日:2004/8/30
【メモ】
昨年春大学進学のため上京、現在休学中
2018年12月交通事故にあい重傷を負っており、その時に魔法使いになったようだ
性格は好戦的にして挑発的、非常に危険なノラ魔法使いと言える
しかし魔法使いとしての実力は異常に高く、しかも現在も成長中だ
ひとつ気になるのは、監視カメラの記録や目撃報告のいくつかが例の土地であることだ
由良野から奪ったあの土地に
こんなぽっと出のノラのレプリカに限って、まさかとは思うが ……
佐理組合流
【緊急報告·西島班がオウルと合流した模様】
オウルメンバーと一緒に行動している報告も複数件あり、間違いはなさそうだ
しかし ……
「西島佐理に武器を渡す渡さないで揉めた」?
「西島班の首に爆弾が仕掛けられている」?
なんだこの報告は?
指名手配ポスターをはがして回っているとの報告もあり、ポスター増刷と貼り直しを指示する
ギルド対策報告書
交渉の記録
【ギルド会談メモ 2024年5月15日】
ギルドの要求は到底こちらの許容できるものではない
監視カメラデータのアクセス権とはな
連中もいよいよ焦りが見えてきたというところか
もちろん監視カメラデータへのアクセスくらいで、あの秘密がバレるもので
はないが、バレようとバレまいと決戦の日が近づいているという事だろう
こちらとしては、その日に備えこちらの戦力を増強し、敵の戦力をそぐだけ
だ
【ギルド会談メモ 2024年5月16日】
交渉はやはり決裂した
もう少し時間を引き延ばしたかったというのが本音だが仕方がない
あとは決戦に向けて準備を進めていくだけだ
最大の気がかりはM.E.A.の戦力低下、これに尽きる
つくづく海藤の裏切りを読めなかったこと、その後西島班を切らざるを得なくなったことが悔やまれる
その失点も渋谷オウルを取り込めさえすればすべて挽回できるのだが ……
真壁蒼空
・氏名 :真壁蒼空 ※M.E.A.指定重要指名手配被疑者
・階級役職:日本魔法ギルド総帥
・性別 :男性
・生年月日:1984/5/23
【メモ】
ギルドで最も有力なレガシーの嫡子とはいえ、若いうちから頭角を現し総帥の座に上り詰めた実力は認めざるを得ない
私より少し年が下だが、いや年下だからこそ、昔から何かと比較されてきた
その彼が、最強となる引き換えに40歳で死亡するという話を聞いたが、本当だろうか
小憎らしいことに、例の日の前日が40歳の誕生日であるという
もちろん偶然に決まっているが、これでその日に負けてしまえば真壁蒼空の神格化は避けられない
それだけは絶対に阻止したいものだ
ツムギ
・氏名 :ツムギ ※M.E.A.指定重要指名手配被疑者
・階級役職:日本魔法ギルド幹部 募集担当
・性別 :女性
・生年月日:1999/2/14
【メモ】
ギルドに入る前は派遣会社の営業職だったらしい
そこからギルドの募集担当になり募集担当幹部へ
この経歴から、M.E.A.内部では事務方であろうとの認識だった
そして、新班長に据えたばかりの西島班による確保
対外的には快挙と持ち上げたが、実際のところツムギへの警戒心はこれで下がってしまった
それがあの失態につながったと言える
今にして思えば故意につかまり、海藤と繋がったのだろう
しかも逃走の際なかなかの戦闘力を見せつけられることになった
未確認情報だがギルド内部で粛清の動きがあり、決闘の末死亡したという
決闘というのがにわかに信じがたいが、堂上家の記録にもそういった制度があることは記されている
レガシーの志道あたりの命令であれば考えられるのかもしれない
新崎ジェム
・氏名 :新崎ジェム ※M.E.A.指定重要指名手配被疑者
・階級役職:日本魔法ギルド幹部 スカウト担当
・性別 :男性
・生年月日:1996/9/9
【メモ】
新崎家はギルドのレガシーの中でも創設メンバーであり古参
しかし近年その勢力は衰え気味だったようだ
そんな中ジェムはスカウト担当の幹部に抜擢されるなど、盛りかえしてきているように見える
ギルドとの会議の際、真壁蒼空の傍らで指示を受けている姿を目撃した
大仰なリアクションにこれ見よがしな阿諛追従
真壁蒼空も辟易としているように見えたが、新崎ジェムはそれに気づかぬようだった
この時ばかりは真壁蒼空に少し同情した
未確認情報だがギルド内部で粛清の動きがあり、ツムギとの決闘の末死亡したという
レガシーにもかかわらずレプリカと相打ちとは、名門の名が彼には重すぎたのだろうか
國府八雲
・氏名 :國府八雲 ※M.E.A.指定重要指名手配被疑者
・階級役職:日本魔法ギルド幹部 國府美術館管理者
・性別 :男性
・生年月日:1981/10/2
【メモ】
常にアナザー内におり、秘密のベールに包まれている
ギルドのレガシーにして幹部、そして國府美術館の館長という肩書だが、
この國府八雲という男、ギルド内では孤高の存在らしい
孤高と言えば聞こえはいいが、要は非主流派と言ったところだろう
國府美術館の収蔵品に関しては、M.E.A.も長年調査しているが、その全貌は掴めていない
未確認情報だが、國府美術館は焼失したらしい
焼失には渋谷オウルも関与しているとの情報もあり、現在調査中
志道竜之介
・氏名 :志道竜之介 ※M.E.A.指定重要指名手配被疑者
・階級役職:日本魔法ギルド幹部 治安維持担当
・性別 :男性
・生年月日:1985/6/4
【メモ】
志道家は武士の家柄であり、ギルドでも代々武門を担当
海藤家とはライバル関係にあったらしい
志道竜之介の報告をまとめると、海藤さんをさらに残忍にした性格のようだ
ギルド内で罪を犯したものを「裁き」と称する裁判ごっこで刑を決め、
結局は処刑しているとか
幹部であるツムギ、レガシーの新崎ジェムも裁きの露に消えたというから、
ギルドはもう組織として末期症状かもしれない
その後の報告で、ギルドの本拠地にてオウルの襲撃を受け死亡したとの情報あり
清川信三郎
・氏名 :清川信三郎 ※M.E.A.指定重要指名手配被疑者
・階級役職:日本魔法ギルド幹部 ルブルム工場工場長
・性別 :男性
・生年月日:1954/7/28
【メモ】
ギルドのレガシーでルブルム工場の工場長
しかし1984年まで新潟県の県立高校で教師をしていた記録があるので、
ギルド入りはこの男の代かららしい
近年ルブルムの効果が飛躍的に向上し、生産効率が上がったのはすべてこの男の手によるもの
そう考えると非常に罪は重い
前任のルブルム工場長虹江田真威人に告発されるが、その裁きの場で返り討
ちにして現在の地位があるとされているので、老人とはいえ攻撃力は侮れないだろう
その後の報告で、清川もオウルの襲撃を受け工場ごと死亡したとの情報あり
須田アリス
・氏名 :須田アリス ※M.E.A.指定重要指名手配被疑者
・階級役職:日本魔法ギルド幹部 魔法動物園管理者
・性別 :女性
・生年月日:1994/10/26
【メモ】
須田家は本来それほど有力ではない家系だが、アリスの代で大きく名を上げた
須田アリスがこれまでにないモンスターの制御方法を編み出したらしい
今ではギルドのモンスター牧場ともいえる魔法動物園の管理者となっている
近年ギルドが積極的にモンスターを使っている裏にこの須田アリスの存在があることは間違いない
一方で、かなり享楽的な性格らしく、ギルド内で浮いているとの情報もあった
ギルド上層部が真壁蒼空の次の総帥として、この須田アリスを推しているとの情報があったが、
おそらくはウソだろう
しかし、この情報に乗ってみるのも悪くない
今なら渋谷オウルが使えそうだ
部外者の力を借りて、有力幹部を一人葬れるのであれば悪くない
ゲームタイトルの権利表記
© FURYU Corporation.
・記載されている会社名・製品名・システム名などは、各社の商標、または登録商標です。
・当サイト上で使用しているゲーム画像の著作権および商標権、その他知的財産権は、当該コンテンツ の提供元に帰属します。
コメント