祇(くにつがみ)村人一覧 - ゆーだりゲームブログ

祇(くにつがみ)村人一覧

祇(くにつがみ)
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かつて定めの巫女と共に山祇との約束を交わし、禍福山に村を築いた祖神の末裔。
祭祀の時期になると常に面を着用し、それぞれの村で奉られている祖神の遣いとして暮らす。
この面は祭祀が執り行われる際に奉納され、翌年まで祖神の面の前に首を垂れる形で安置される。

明光峠

半助真面目によく働き、よく稼ぐ青年。実は博打が大好きで、
ひと月の稼ぎを手に山を下りては全てを失って帰ってくる。
ふく博打好きの兄「半助」にほとほと困り果てている。
兄が大負けして帰ってきても良いように、日ごろからこつこつと節約している。
孫市腰痛持ちの父「権兵衛」の補助として木材の伐採をおこなっている。
毎日厳しい父親に鍛えられ、最近一人でも仕事をこなせるようになってきた。
権兵衛社寺建築で使用する木材の伐採を生業にしている。
最近持病の腰痛が悪化したらしく、息子の「孫市」に任せて隠居しようかと悩んでいる。

明光峠の村は、薄明かりが山々を包み込む頃、静かに目を覚ます。村の端に位置する権兵衛の家からは、薪を割る音が響き渡る。権兵衛は腰痛を抱えながらも、早朝から息子の孫市と共に木材の準備をしている。

「孫市、今日はここまでにしよう。腰がどうも言うことを聞かん。」

権兵衛は汗を拭いながら、孫市に声をかける。孫市は父親の背中に強い敬意と同時に、少しの心配を抱いていた。

「父さん、無理しないでください。俺がやりますから。」

孫市は父親の重い仕事を受け継ぐ覚悟で、日々鍛えられてきた。その眼差しには、自信と若さが漲っている。

一方、村の中心にある半助の家では、ふくが井戸から水を汲んでいた。半助は昨晩遅くまで賭け事に興じ、今日も寝坊している。

「まったく、兄さんは…また負けたんでしょう。」

ふくはため息をつきながらも、家計を支えるために日々の節約を欠かさない。彼女の心の中には、兄への愛情と苛立ちが入り混じっていた。

「おはよう、ふく。まだ眠いよ。」

ようやく目を覚ました半助が、寝ぼけ眼でふくに挨拶する。ふくは微笑みを浮かべながら、兄に朝食を差し出した。

「おはよう、兄さん。でも、もう少し早く起きてくれないと困るわ。」

半助は、妹の優しさに感謝しつつも、自分の癖を変えることはできないでいた。

その頃、村の外れに位置する神社では、鳥の鳴き声が響き渡る。山から切り出された木材が、社寺の修繕に使われるのを待っている。権兵衛と孫市が伐採した木々は、この地の歴史と共に生き続ける。

村人たちの一日は、こうして静かに、しかし確実に始まっていく。明光峠の村は、今日も変わらず、その静かな営みを続けるのであった。

駆足林

彦作弟の「忠吉」と共に暮らしている。「伊右衛門」に妻ができてからろいうもの、
晩酌になかなか付き合ってくれないのが悩み。
伊右衛門物腰穏やかな青年。
最近嫁いできた妻の「きぬ」を溺愛しており、惚気話を聞かされる周囲の人間はうんざりしている。
忠吉兄の「彦作」と共に暮らしている。
今まで女性との関りがほとんどなかったため、最近やって来た「きぬ」とどう接するべきか戸惑っている。
きぬ山の麓の村から嫁いできた女性。
慣れない環境に最初は戸惑いながらも、最近になってようやく村の暮らしにも慣れてきた。

駆足林の朝は、静寂と共に始まる。山の頂上に近いこの村では、参道の両側に広がる林が少々不気味で、人々は自然と足を速める。それがこの村の名前の由来であった。

村の中心にある小さな家で、彦作は弟の忠吉と共に目を覚ました。朝の光が障子を透かして柔らかく部屋を照らす。「忠吉、もう朝だ。起きろ」と彦作は弟に声をかける。忠吉は目をこすりながら、少しの間ぼんやりとしていたが、やがて立ち上がった。

朝食を終えると、二人は村の仕事に取り掛かる。彦作は畑の手入れをし、忠吉は村の周りを見回る役目だ。その日の天気は快晴で、青空が広がっていた。だが、彦作には一つ気になることがあった。最近、晩酌に付き合ってくれる友が少なくなってきたのだ。

「伊右衛門のやつ、きぬさんが来てから全然顔を出さないな」と、彦作はつぶやいた。伊右衛門は村の物腰穏やかな青年で、最近きぬという美しい女性を嫁に迎えた。それ以来、彼は妻を溺愛し、惚気話を延々と聞かされる村人たちはうんざりしていた。

そのころ、伊右衛門の家では、きぬが朝の支度をしていた。きぬは最初、駆足林の不気味な雰囲気に戸惑っていたが、最近では少しずつ慣れてきた。伊右衛門は優しく、村の人々も温かく迎えてくれたからだ。しかし、きぬもまた、伊右衛門の惚気話に少し辟易しているのを感じていた。

「伊右衛門さん、今日は村の皆さんとお話しするのもいいかもしれませんね」と、きぬは控えめに提案した。「そうだな、きぬ。少し村を回ってくるとしよう」と伊右衛門は笑顔で答えた。

その日、伊右衛門は村の広場で彦作と再会した。「おい、伊右衛門。最近全然顔を見せないじゃないか」と彦作が笑顔で言った。「すまない、彦作。きぬのことばかりで…」と伊右衛門は照れくさそうに答えた。「まあ、幸せそうで何よりだ。でもたまには一緒に晩酌しようぜ」と彦作は肩を叩いた。

その夜、駆足林の小さな居酒屋で、久しぶりに彦作と伊右衛門は酒を酌み交わした。忠吉も加わり、三人で笑いながら過ごす時間は、村の静寂とは対照的に賑やかだった。伊右衛門の惚気話も少しずつ聞き流せるようになった。

こうして、駆足林の一日は終わり、また新しい朝が訪れる。人々は林の不気味さに足を速めながらも、その村には温かい絆が広がっていた。

幽暗洞

はつ暗い洞窟で怪我をするひとが出ないように、灯篭の火を見回るのが日課。
幽暗洞における名物的な女性であり、参拝者からの人気も高い
甚五郎人付き合いの良さが評判の男性。
「千助」によるバレバレないたずらにも、あえて付き合ってあげている人格者。
千助いたずらが生きがいで、よく「甚五郎」のことをからかって遊んでいる。
洞窟内で人を驚かそうと隠れていた所を畏哭に襲われたらしく、さすがに今回は懲りたらしい。
七兵衛とても臆病な性格で常にびくびくしている、
先日は風に飛ばされた手拭いを幽霊と見間違え、腰を抜かしたらしい。
次郎言暗くじめじめしたところが好きで、よく洞窟内に一人でいる。
洞窟内にいる蛇たちとは友達だと思っている。

幽暗洞と呼ばれる村は、その名の通り暗く冷たい洞窟に通じる参道が特徴だ。その洞窟はかつて、近隣の村々を悩ませた害虫たちの根城であったという噂が絶えない。

日の光が届かぬその洞窟の入口で、はつは灯篭の火を見回っていた。彼女は幽暗洞の名物的な存在であり、その美しい笑顔は参拝者たちの心を和ませた。「今日も怪我人が出ないようにしないとね」と、はつは自分に言い聞かせるように呟いた。

一方、村の広場では、甚五郎が笑い声を響かせていた。彼は人付き合いの良さで知られ、村の誰からも慕われている。今日は千助がまたいたずらを仕掛けてきている。「甚五郎さん、背中に何かついてますよ!」と、千助は無邪気な笑顔で言う。甚五郎はその手に乗りながらも、温かい目で千助を見守っていた。

しかし、千助のいたずらも度が過ぎることがある。先日、洞窟内で誰かを驚かそうと隠れていた千助は、突然の畏怖に襲われた。彼はその恐ろしい体験から少しだけ大人しくなったようだ。

そんな中、七兵衛は今日もびくびくしながら村を歩いていた。臆病な彼は、風に飛ばされた手拭いを幽霊と見間違えたことがあり、その時は腰を抜かしてしまった。「また何かが出るかもしれない」と、彼は周囲を見渡しながら呟く。

洞窟の奥深くでは、次郎言が一人静かに過ごしていた。彼は暗くじめじめした場所が好きで、洞窟内にいる蛇たちを友達だと思っている。「今日も君たちは元気かい?」と、次郎言は蛇たちに話しかける。彼のその姿は、幽暗洞の一風変わった風景を象徴していた。

夕方になり、村の灯篭が一斉に灯された。はつはその光景を見て、ほっと安堵の息をついた。「今日も無事に一日が終わった」と、彼女は微笑んだ。

甚五郎は千助と共に村の広場で話し合い、七兵衛は家に帰る道を急ぎ、次郎言は洞窟の奥で静かな時間を楽しんでいた。幽暗洞の一日はこうして静かに、しかし確かに過ぎていく。

幽暗洞の村人たちは、それぞれの個性を持ちながらも、この不気味な洞窟に囲まれた村での生活を楽しんでいた。彼らの絆は、暗闇の中に光をもたらすかのように、強く結ばれていた。

縁離村

又ベヱ三度の飯より寝るのが好き。
畏哭の襲撃によって睡眠時間が削られていることに、村の誰よりも怒りを覚えている。
熊次郎幼い頃に野生動物に育てられていたという噂がある男。
しかし、本人が語らないため真実を知る者はいない。
時次毎日を無駄なく予定通りに過ごすのが生きがい。
寝てばかりで時間を無駄にしている「又ベヱ」に良い感情を抱いていない。
きん彼女が作る芋煮は絶品だと村でも評判。
招来は村を出て色んな人に自分の料理を食べてもらいたいと思っている。
新八俳句を詠むのが趣味。日々、俳句の題材になるものはないか探し回っている。
しかし俳句の腕はお世辞にも良くないらしい。
清介妻の「かや」とは幼い頃からの仲。
村のリーダー的存在で、よく他の村人の世話を焼いているため信望も厚い。
かや夫である「清介」のことを信頼している。
同じ村に住む「きん」が芋煮をおすそ分けしてくれるのが密かな楽しみ。
茂七手先の器用さには自信がある。村の日用品の修理は実質彼が全て受け持っている。
彼に修理してもらった道具は新品同然になると評判。

平安の静寂な朝、縁離村はまだ薄い霧に包まれていた。村の中央に位置する大きな楠の木が、朝露を含んだ葉を揺らしながら風に応えている。その下で、俳句を詠むのが趣味の新八が、今日も一句をひねり出そうと、眉間にしわを寄せていた。

「霧深し…いや、露深し?いやいや…」新八は、まるで蜘蛛の巣に絡まった蝶のように、言葉に囚われている。だが、彼の脇を通り過ぎる熊次郎は、その様子に全く興味を示さず、無言で山へと向かっていた。幼い頃、野生動物に育てられたという噂が絶えない熊次郎。その背中には、どこか人間離れした気配が漂っている。

一方で、村の外れの草むらでは、またしても異様な叫び声が響き渡った。畏哭の襲撃だ。畏哭は、この地に流れ着いた孤独な魂の叫びとも言われ、村人たちの安寧を脅かしていた。村長である清介が駆けつけると、既に茂七が畏哭の鳴き声に怯え、破れた籠を抱えて修理に取り掛かっていた。

「また畏哭か…」清介は深いため息をついた。「茂七、籠は任せるが、気をつけろ。今朝の畏哭はいつもより激しい。」

「任せてください、清介さん。この籠、すぐに新品同然にしてみせますよ。」茂七は手先の器用さに自信を持っており、村の日用品の修理は彼の独壇場だった。しかし、畏哭の鳴き声が彼の心を揺さぶっているのは明白だった。

そのころ、きんは家の台所で芋煮の仕込みをしていた。彼女の芋煮は村でも評判で、特にかやがこの芋煮を心待ちにしていることを知っていた。しかし、きんの心は村を出て、自分の料理を多くの人に食べてもらいたいという野望に燃えていた。

一方、村の片隅では又ベヱが昼寝をしていた。畏哭の叫び声が村を揺るがすたびに、彼の眉がひそめられる。睡眠時間を奪われることに、誰よりも怒りを覚えていたのだ。「あの声さえなければ…」又ベヱは、また深い眠りに落ちることを試みたが、畏哭の音が彼の眠りを遮ってしまう。

そして時次は、今日もまた完璧な一日を過ごすべく、定められた時間通りに動いていた。彼はまたベヱの怠け者ぶりに苛立ちを覚えつつ、自分の時間を無駄にすることを何よりも嫌っていた。

縁離村は、こうしてそれぞれの思いが交差する場所だった。村人たちは日々の生活に追われながらも、心のどこかで、村を取り巻く謎めいた過去と、畏哭の声が響く不安定な未来に思いを馳せていた。静かでありながらも、何かが動き出そうとしているような、そんな一日の始まりだった。

奥深山街道

よな恋に悩めるうら若き乙女。運命の人がいつか現れると信じている。
本人曰く、好みの男性はしっかり者で清く正しい人とのこと。
善右衛門清く、正しくが信条の青年。自身の名に恥じぬよう一日一善を心掛けており、
他の村人たちからも信頼されている。
勘三郎極力働かずにのんびり過ごしたいと思っており、毎日働かずぶらぶらしている。
最近母親の監視が厳しくうんざりしている。
ふさ息子が働かずにぶらぶらしていることにほとほと困り果てている。
なかなか息子を叱らない夫をいつも𠮟りつけている。
孫六一人息子に対して非常に甘い。妻に叱られつつも働かない息子に対し、
「働きたくなったら働けばいい」と見守る姿勢を取っている。
八兵衛村一番のしっかり者。自ら率先して他の村人を助ける姿勢から
「しっかり八兵衛」と呼ばれ親しまれている。
茂助職人気質な男で、自分の仕事に誇りをもっている。
口下手で気難しいと思われているが、仕事の話になると饒舌になる。

奥深山街道の夕暮れは、他の村にはない特別な色を帯びている。周囲を取り囲む深山幽谷は、夕陽に照らされて赤く染まり、村を包む薄い霞が黄金色に輝く。街道を行き交う人々の姿が影絵のように映り、まるで遠い夢の中の出来事のようだった。

よなは、その景色を眺めながら村外れの丘に腰を下ろしていた。彼女の胸の中には、いつか運命の人と出会うという淡い希望が芽生えていた。彼女が思い描くその人は、清く正しく、そしてしっかり者。そんな男性が、この奥深山街道を歩いてやってくる日を夢見ていた。

一方、村の中央では、善右衛門が道端の石を丁寧にどけていた。彼は一日一善を信条としており、村人たちからも信頼される存在だった。夕暮れの街道を整備する姿は、まさに彼の誠実さを象徴していた。彼の手がかりなく動くその様子を見たよなは、心の中で密かにため息をついた。これこそが彼女が探し求める人かもしれない、と。

その近くで、勘三郎は大きな栗の木の下に腰を下ろしていた。彼は日々を働かずに過ごすことに喜びを見出していたが、最近は母親のふさが厳しく監視しているため、気が休まらない。「なんで母さんはあんなにうるさいんだ…」とぼやきながら、街道を行き交う人々を眺めていた。

その勘三郎の母、ふさは家の前で腕組みをしながら息子を探していた。彼女は働かない息子にほとほと困り果てており、夫の孫六が何もしない姿勢に苛立ちを募らせていた。「あんたも少しは勘三郎に厳しくしなさいよ!」と孫六を叱りつける声が、夕暮れの村に響いた。

孫六は、いつものように妻の叱責を受けながらも、息子には甘いままだった。「働きたくなったら働けばいい」と思う彼は、息子が村を見守る役割を果たしてくれる日を静かに待っていた。

その夕刻、八兵衛は村の広場でせっせと働いていた。彼は村一番のしっかり者で、村人たちの頼りにされる存在だ。自分の手で街道の一部を修理しながら、「しっかり八兵衛」と呼ばれることに誇りを感じていた。

さらに、職人気質な茂助は、村の鍛冶場で火を起こしながら、今日も黙々と仕事をしていた。彼は口下手で気難しいと思われがちだが、仕事の話になると途端に饒舌になる。今日もまた、彼の鍛冶場から響く金槌の音が、夕暮れの静寂を破り、村に生命を吹き込んでいた。

夕陽が西の山に沈む頃、村は再び静けさを取り戻した。奥深山街道を行き交う人々は徐々に少なくなり、村は夜の帳に包まれていく。しかし、そこには一日の終わりと共に、それぞれの思いが深まる光景があった。恋に悩むよな、誠実な善右衛門、怠け者の勘三郎とそれを見守る家族たち。そして、村を支える八兵衛と茂助。それぞれがこの奥深山街道の一部であり、静かでありながらも豊かな村の物語を紡いでいた。

萌黄乃棚

半兵衛毎日仕事もせず他の村人に迷惑をかけていることで「半端者の半兵衛」と揶揄されている。
ただ、本人曰く真面目に働いている方が馬鹿らしいとのこと。
さわ控えめで引っ込み思案な性格の女性。
真面目な「清吉」のことが気になっているが、なかなか声をかけられずにいる。
清吉男手一つで自分を育ててくれた父に感謝している。
少しでも父に楽をさせてやりたいと、こっそり貯金している。
伊助兄の「清吉」と共に田の手入れに勤しんでいる。
最近の悩みは父が早く嫁を迎えろとうるさいことらしい。
藤四郎妻が亡くなった後、男手一つで「清吉」と「伊助」を育て上げた苦労人。
息子たちに早く良い結婚相手を見つけてもらいたいことが最近の悩み。
俵丸村一番の力自慢。いつか村を出て大横綱になるのが夢。
より体を大きくするために食べる量を増やしたことで、村中の食糧が付きかける事件があった。
ふじ田植えの速さは村で一番らしい。
夫の「籾介」と田の手入れをしている時が至福の一時とのこと。
籾介妻と一緒に毎日かかさず田の手入れを行っている。
雨の日は田の状態が心配でなかなか寝つけないらしい。
市左衛門ある時ふらっと村にやってきた男性。当初は周りから警戒されていたが、
村人たちに読み書きを教えるなどの功績が買われ、一目置かれるようになった。
千枝松最近隣村から妻を娶った若旦那。力仕事は得意な方ではなかったが、
妻に良い所を見せるため、田の手入れを頑張っている。
きく隣の村からこの村に住む「千枝松」の元に嫁いできた箱入り娘。
同じ村に住む夫婦から田植えの手ほどきを受け、最近は様になってきたらしい。
為蔵村で使う肥料を作るのを生業にしている。
村にとっても大事な仕事のため、誇りをもって働いている。少し臭う。

秋風が吹き渡る萌黄乃棚の棚田。黄金色に輝く稲穂が、風に揺られて波打つ様は、まるで大地に広がる絹の海のようだった。この地に代々受け継がれてきた稲田は、村の誇りであり、その美しさは訪れる者すべてを魅了してやまない。

その棚田の一角に、さわが一人、控えめに佇んでいた。彼女の視線は、せっせと田の手入れに励む清吉に向けられている。清吉は、黙々と仕事をこなす姿が村の若者たちの中でも一際目立つ。彼の真面目な性格と優しさに、さわは密かに憧れを抱いていたが、声をかける勇気はどうしても湧いてこない。

「今日も真面目に働いてるね…」さわは、心の中でそう呟きながら、自分の想いを胸に秘めたまま、また一歩、清吉の近くに寄ろうとした。

その時、棚田の反対側から大きな声が響いた。「おい、半兵衛!また仕事もせずにぶらぶらしているのか!」村の力自慢である俵丸が、棚田の傍らでのんびりと横たわる半兵衛に向かって叫んだ。半兵衛は、村中から「半端者の半兵衛」と揶揄されていたが、本人はそのあだ名を気にする様子もなく、毎日を気楽に過ごしていた。

「真面目に働くなんて馬鹿らしいさ。稲は勝手に育つんだから、俺が何をしようと関係ないだろう?」半兵衛は、空を仰ぎながら、涼しげに答えた。

「その考えが甘いんだよ、半兵衛!この棚田は、みんなの汗と努力で成り立っているんだ。」俵丸は、大きな手で稲穂を撫でながら、村の誇りを守るために自らの力を誇示するように立ち上がった。

その光景を見つめる藤四郎は、少し離れた場所で、息子たちが働く姿を見守っていた。彼は一人で清吉と伊助を育て上げた苦労人で、最近では二人が良い嫁を見つけることが何よりの願いだった。「清吉、伊助…お前たちには、幸せになってほしいんだ。」藤四郎は静かにそう呟き、老いた体に鞭打って稲の収穫を手伝い始めた。

その頃、千枝松ときくの新婚夫婦も、田の手入れに精を出していた。きくは、まだ田植えの手ほどきを受けたばかりだったが、夫のために一生懸命働く姿は村人たちに温かく見守られていた。「私も頑張らなきゃ…」きくは、自分に言い聞かせながら、稲を丁寧に扱っていた。

棚田の奥では、ふじと籾介が並んで田の手入れをしていた。ふじの田植えの速さは村でも一番で、夫と過ごすこの時間が彼女にとって何よりの幸せだった。「今日も豊作になりそうだね。」籾介は、妻の腕前に感心しながら、田んぼを見渡していた。

村の片隅では、為蔵が村で使う肥料を作っていた。その姿は真剣そのもので、彼の手で作られる肥料が棚田の稲を育む大切な要素であることを、村人たちはよく知っていた。「この仕事があるから、みんなが笑顔でいられるんだ…」為蔵は、少し臭う仕事に誇りを感じながら、黙々と作業を続けていた。

夕暮れが近づくと、村人たちはそれぞれの仕事を終え、黄金色に輝く棚田を眺めた。その美しさは、彼らの日々の努力の結晶であり、村の未来を約束するものであった。萌黄乃棚の村は、今日もまた、豊かな実りと共に静かな夜を迎えようとしていた。

弓鳴湖

さく最近娘が隣村へと嫁いでいった。久方ぶりに夫婦水入らずの時間が増えたため
寂しく思う反面、嬉しくも感じている。
文蔵漁師歴二十年の達人。娘が隣村に嫁いでいった寂しさからか
最近ため息が増えているらしい。
孫作漁師として働いているが、全く泳げないのが悩み。
「いそ」に泳ぎを教えてもらいたいが、恥ずかしくて言い出せないでいる。
いそ村で一番泳ぐのが得意。湖が畏哭によって穢されてしまい、
泳げなくなってしまったことに心を痛めている。
たつ夫の「太兵衛」を尻に敷く明朗快活な女性。
村で一番魚を捕るのが上手く他の漁師たちにも気負けしていない。
太兵衛弓鳴湖で漁師として働いている。舟の上では怖いもの無しと豪語しているが、
嫁の「たつ」にはいつも頭が上がらない。
つや母である「たつ」に似て、はつらつとした性格。
髪の手入れが趣味で定期的に訪れる商人から鬢付け油を買うのを楽しみにしている。
伝介村一番の情報通。取り扱う情報は多岐に渡り、村の恋愛事情から隣村の財政状況まで
と彼が知らない情報はないのではないかというほど。
七右衛門研究のために新種の魚を求めて弓鳴湖を中心に活動している。
「平三郎」の目論見に興味を示しており、共同で進められないか打診している。
平三郎魚を愛しすぎるあまり、漁師としてやっていけなくなってしまった男。
魚を捕まえるのではなく、保護し鑑賞できる施設を作ろうと模索している。

朝もやが弓鳴湖を覆い、静かな湖面が鏡のように村を映し出している。澄んだ水は、まるで世界の穢れを洗い流すかのように清らかで、村人たちの心の拠り所となっていた。湖の幸を求めて今日も漁に出る村人たちの姿が、霧の中から徐々に浮かび上がってくる。

「ふぅ…」と、岸辺でため息をつくのは、文蔵だ。彼は漁師歴二十年の達人で、これまで数えきれないほどの魚をこの湖から引き上げてきた。しかし、最近は娘が隣村に嫁いでいった寂しさからか、そのため息の数が増えていた。「あいつも、もう嫁いでしまったか…」文蔵は、湖面に映る自分の顔を見つめながら、遠い日の思い出に浸っていた。

その近くで、孫作が足をバタバタさせている。彼もまた漁師だが、全く泳げないことが悩みの種だった。湖に落ちれば命取りとなるこの仕事において、泳げないというのは致命的だ。しかし、誰にもそのことを打ち明けられずにいる。「いそに教えてもらえればいいんだが…」孫作はちらりといそを見やるが、恥ずかしさが勝って言い出せないでいる。

いそは村で一番泳ぎが得意な女性だ。湖が穢れに襲われた後も、彼女はただ一人、泳ぎ続けることができた。しかし、その穢れが湖を汚染して以来、湖の中で感じる異質な冷たさが彼女の心を痛めていた。「この湖を元に戻すことができるのだろうか…」いそは湖面を見つめ、苦悩の表情を浮かべる。

一方、湖の中央では、たつが大きな声で夫の太兵衛に指示を飛ばしていた。「太兵衛、その網をもっと右だ!」たつは村一番の漁師で、他の男性漁師たちにも負けない腕を持っている。太兵衛は舟の上では怖いもの無しと豪語しているが、嫁のたつにはまるで頭が上がらない。「はいはい、たつの言うとおりにしますよ…」太兵衛は苦笑いしながらも、彼女の言うとおりに網を操っていた。

たつの娘、つやもまた湖のほとりにいた。母譲りの明るい性格で、髪の手入れが趣味の彼女は、商人が持ってくる鬢付け油を楽しみにしている。「今日はどんな油を買おうかしら…」つやは、髪を指で梳きながら、湖面に映る自分の姿を眺めていた。

その少し離れた場所で、伝介が村人たちの会話を興味深そうに聞いている。彼は村一番の情報通で、村の恋愛事情から隣村の財政状況まで、彼の知らないことはほとんどない。今日もまた、新しい情報を収集し、村人たちにそれを伝えることで得られる満足感を求めていた。

そんな中、七右衛門が湖畔で釣り竿を手にしながら、平三郎と何やら話し込んでいる。七右衛門は新種の魚を求めて湖を探索しており、平三郎はその魚たちを保護し鑑賞する施設を作ろうと模索していた。「この湖にはまだ未知の生き物がいるかもしれない。平三郎、一緒にやってみないか?」七右衛門が目を輝かせて言うと、平三郎もまた、その提案に心が動かされた。「やってみよう。湖を守るためにも、俺たちの力を合わせよう。」

湖面に浮かぶ漁船たちが一斉に網を引き上げると、湖の恵みがその中で輝いた。弓鳴湖は今日も、村人たちの生活を支え、その清らかな水で彼らの心を癒している。穢れを落とす湖水の音が、村全体に静かに響き渡る中、村人たちはそれぞれの想いを胸に、穏やかな日常を過ごしていた。

化野村

いのこのんびりしていて、おっちょこちょいな性格。
夫の「田吾作」とは似たもの夫婦なため、夫婦仲は良好とのこと。
田吾作妻がそんな失敗をしても笑って受け入れる懐が深い性格。
夫婦そろって軒先でのんびりしている様子がよく見られる。
ゆり夫である「惣佐衛門」を献身的に支える才色兼備な女性。
一見完璧そうに見える彼女だが、料理の腕は壊滅的らしい。
惣佐衛門村の祭祀を取り仕切るリーダー的存在。誰に対しても分け隔てなく接するため、
村人たちから好かれている。妻の作る料理をどう完食するかが日々の悩み。
兵介村のお騒がせ兄弟。いたずらが大好きで弟の「文六」と共に
他の村人たちにいたずらを仕掛けるのが日課。
文六村のお騒がせ兄弟。兄とのいたずらにおける頭脳担当。
本当に危ないことにならないよう兄を制御するのが彼の役割。
庄言怖い話が大好き。村では夏になると彼の怪談を聞きに集まるのが恒例。
自慢の怪談を引っ提げて都へ行き、怪談専門の噺屋として一発当てる野望を抱いている。
みよ猫が大好きだが、猫には好かれない不幸な女性。猫に異常に好かれている「猫千代」から
その秘訣を聞き出したいが、彼からも避けられてしまっている。
猫千代人付き合いは苦手だが、異常に猫に好かれている。他の村人たちから
実は猫と会話できるのではないかと噂されている。

化野村は、夜明け前から薄闇に包まれたまま、静かにその姿を現し始める。祭祀の季節が近づくにつれ、村はいつもの静けさを少しずつ脱ぎ捨て、胸の内に眠る興奮を露わにしていく。

朝霧が薄れると、村の中央にある広場から祭りの準備が始まった。惣佐衛門が腕を組み、祭りの太鼓や旗の配置を見定めている。彼の姿は、村の人々にとって頼りになる象徴であり、誰もが彼の指示に従って動き出す。旗が風に揺れるたびに、祭りの始まりを告げる合図が遠く山々にまで届くようだった。

村の奥には、いのこと田吾作の家がある。彼らは朝の光を浴びながら、軒先でのんびりと腰を下ろしていた。朝露に濡れた庭の草花が輝き、風が吹き抜けるたびに、彼らの穏やかな笑い声が聞こえてくる。いのこが何かをつまらせて咳き込むと、田吾作が大きな手で背中を軽く叩いてやる。その様子は、どこか微笑ましく、時の流れを忘れさせるほど平和だった。

一方、兵介と文六の兄弟は、村の端で密かに相談をしていた。二人は村祭りで一つ大きないたずらを仕掛けようと計画中だ。祭りの太鼓を鳴らし始める直前に、何か特別な仕掛けを施すつもりなのだ。文六は兄に「今度こそ失敗しないでくれよ」と念を押しながら、慎重に段取りを確認していた。朝日の光が彼らの顔を照らし、どこかいたずらっ子のような表情が浮かぶ。

村の外れに住む庄言は、今朝も一人で物思いにふけっていた。彼の家の前には、いつも不気味な静けさが漂い、夏になるとその不気味さがさらに増す。彼は村の夏の夜を賑わせる怪談の準備に余念がない。今年もまた、恐ろしい話で村人たちを震え上がらせるつもりでいる。

広場に戻ると、猫千代が足元に集まる猫たちと共に歩いているのが見えた。彼は村人たちとあまり交流せず、猫たちとだけ心を通わせるように見える。その姿を遠くから眺めていたみよは、どうにかして猫千代から猫に好かれる秘訣を聞き出したいと思いながら、今日もまた声をかけられずにいた。

祭りの日が近づくにつれて、化野村はその静かな日常を脱ぎ捨て、賑やかな鼓動を取り戻していく。村の端から端までが、人々の笑い声や話し声、そして遠くから響く太鼓の音に満ち溢れ、祭りの熱気が空気を震わせる。村全体が一つになり、祭りに向けた準備が整いつつある中で、化野村は生き生きとした生命力を取り戻していくのだ。

無縁塚

しも夫の「茂兵衛」と共に、この地に流れ着いた訳ありの村人たちの世話を甲斐甲斐しく焼いている。
人当たりの良さから他の村人たちからも好かれている。
茂兵衛代々墓守を任されている一族の末裔。
穢れが生じやすい一帯の管理を任されているだけあり、畏哭を見ても動じない胆力の持ち主。
いわ都の屋敷で奉公していた過去を持つ。
夫に騙された憎しみから復讐を果たした後、この地に流れ着いた。
今はただこの静かな地で平穏に暮らしたいと考えている。
すわ謂れのない罪を擦り付けられ、追われてこの地に流れ着いた。
人間不信気味だが、常に気にかけてくれている「しも」には心を開いている。
与十郎麓の町からやってきた手先が器用な男性。
元々住んでいた地で何か問題がありこの村にやってきたらしいが、理由は教えてくれない。

無縁塚の村は、まるで時間が止まったかのように静まり返っていた。村の中央にある古びた祠の周りには、濃い霧が立ち込め、木々のざわめきが風に乗って聞こえる。太陽は山の背後に隠れ、薄紅の光が大地を柔らかく照らしている。まるで、この場所がかつて栄えたことを、わずかな光だけが知っているかのように。

霧の中を、しもと茂兵衛の姿がゆっくりと浮かび上がる。二人は墓石の間を歩き、穢れを払い清めるために祠の周りを整えていた。しもは穏やかな顔つきで、小さな祠に手を合わせ、軽く一礼をしてから茂兵衛に声をかけた。

「茂兵衛さん、この霧もすぐに晴れるでしょうかねえ。」

茂兵衛は、しもの問いかけに微笑を浮かべ、手にした箒をしっかりと握り直した。

「そうじゃな。ここはいつもそうだ、霧が晴れるとき、村もまた静けさを取り戻す。けれど、この静けさが続くのも、わしらの役目じゃ。」

しもの柔らかな目が茂兵衛の言葉を受け止め、二人は再び霧の中で作業を続けた。彼らがこの村にたどり着いたのは、遥か昔のことだが、そのときから変わらぬ日常が、彼らの手によって守られている。

村の片隅には、いわが一人で座り、かつて都での暮らしを思い返していた。彼女の心には、都を去った時の痛みと憎しみがまだ残っていたが、無縁塚の静けさは、彼女の心を少しずつ癒していた。隣にはすわが座り、彼女もまた過去の傷を抱えながら、しもの優しさに支えられている。

「いわさん、少し前を向けるようになったかもしれない。」

すわの小さな声に、いわは穏やかにうなずいた。彼女たちが抱える暗い過去も、この村の静寂の中で少しずつ癒されていく。

そして、村の外れにある小屋では、与十郎が静かに手を動かしていた。木を削り、細工を施しながら、彼の頭には麓の町での記憶が浮かんでは消える。誰にも話せぬその記憶が、彼の胸に重くのしかかるが、彼はただ黙々と仕事に没頭することで、その重さを和らげようとしていた。

無縁塚の村は、静寂と共に生き続ける。村人たちの過去は決して消えることはないが、この村の静けさが、彼らの心を包み込み、少しずつ穏やかな日常を取り戻させてくれる。無縁塚の静寂は、過去を抱えた者たちにとって、安らぎの地であり、また新たな始まりを告げる場所でもあった。

蓮華沼

肥丸何よりも食べるのが好きな大食漢。
同じく食べるのが好きな麓の町の女性と以前村の祭りの際に出会い意気投合した。
土彦何よりも土いじりが大好き。
大食漢な兄が自分が作った作物を美味しそうに食べてくれるのでやりがいを感じている。
こちょう「甚吉」のもとに嫁いできた女性。植物に興味はなかったが
熱心に植物についておしえてくれる夫の影響もあり、少しずつ興味が湧いてきている。
甚吉染料に使える植物を育てて生計を立てている。息子たちが全く家業に興味を示さないなか、
最近になって妻である「こちょう」が植物に興味を持ち始めてくれたのが嬉しい。
又作染色を生業としている男。「甚吉」とは幼馴染で、染色に使う植物を譲ってもらう代わりに、
その植物で染めた衣服を提供している。
新兵衛新しいものが好きで飽きっぽい性格。
家業には微塵も興味がなく、たまに商人から手に入れられる舶来品を買い取っては改造するのが趣味。
仙治郎この地に住み着いた「弥助」に倣い、見よう見まねで絵を描き始めた。
その影響もあり、将来は家業を継ぐよりも旅をしながら色んな土地の絵を描きたいという夢ができたらしい。
弥助絵を描くためにこの地を訪れ、そのまま気に入って住み着いた放浪の浮世絵師。
彼曰く、この地の土や泥、植物は絵を描くための良い材料になるそうだ。

蓮華沼の朝は、霧に包まれて静かに始まる。沼の水面は、陽が昇るにつれて淡い金色に輝き、周りの木々は露を含んだ葉を揺らしながら、眠りから目覚めたばかりのようにささやいている。風がそよぐと、花の香りがふわりと漂い、沼のほとりに住む村人たちの一日が静かに動き出す。

村の端にある畑では、土彦が朝早くから鍬を手にして土をいじっている。彼の手は、幾度となく大地を耕し、作物を育ててきたが、その表情にはいつも新鮮な喜びが浮かんでいる。畑の土は肥え、彼が植えた作物は毎年豊かに実を結ぶ。彼の兄、肥丸が畑の隅にしゃがみ込んで、土から顔を出したばかりの野菜を嬉しそうに見つめている。

「土彦、この大根、今年も立派に育ってるなぁ。」

肥丸は手にした大根を軽く振りながら、弟に声をかけた。その顔には、まるで宝物を手にしたかのような喜びが満ちている。

「兄貴が楽しみにしてくれるから、俺も頑張れるよ。」

土彦は微笑みながら、さらに深く鍬を入れる。畑仕事は彼にとって生き甲斐であり、兄がその成果を存分に味わってくれることが、何よりの励みとなっている。

その頃、蓮華沼の近くでは、甚吉とこちょうが共に草木を眺めていた。甚吉は染料に使う植物を育てることに余念がなく、こちょうはその姿をそばで見守っている。かつては植物に興味を持たなかったこちょうも、今では夫の熱意に影響され、自然の美しさに魅了され始めていた。

「この草、名前はなんていうの?」

こちょうが指差したのは、小さな青い花を咲かせた草だった。甚吉はその草を見て、微笑んだ。

「これは藍草じゃ。これで染めると、美しい青になるんだ。お前も、少しずつ覚えてくれると嬉しい。」

こちょうは頷きながら、藍草をじっと見つめた。その小さな青い花には、深い魅力が隠されているように感じられた。

村の中心では、仙治郎が絵を描いていた。彼は弥助から絵の技を学び、今では自分の感性を活かして風景を描くことに夢中になっている。弥助の影響で、仙治郎はいつかこの村を飛び出し、各地を旅しながら絵を描きたいという夢を抱くようになっていた。

「仙治郎、そろそろ昼飯にするか?」

弥助が声をかけると、仙治郎は筆を止め、笑顔でうなずいた。彼の絵には、この村の四季折々の風景が描かれており、その中には蓮華沼の美しい姿も映し出されていた。

蓮華沼の村人たちは、それぞれの手でこの地の四季を彩っている。肥丸の大食漢な喜び、土彦の土への愛情、甚吉とこちょうの植物への思い、そして仙治郎の絵に込められた夢。これらが織り成す物語は、蓮華沼の静けさと共に、今日も変わらず続いていく。

神座神社

さな巫女見習いとして大桜がある村からやってきた。
立派な巫女になるために日々お勤めを頑張っている。
村に残してきた姉のことが少し心配。
ゆきおっとりとした性格の巫女。「りん」、「ちよ」とは仲良しでよく一緒にいる。
後輩がみんな可愛くてつい世話を焼きがち。
りん姉御肌な巫女。「ゆき」、「ちよ」とは仲良しでよく一緒にいる。
巫女見習いの後輩たちに慕われている。
ちよ元気な性格の巫女。「りん」、「ゆき」とは仲良しでよく一緒にいる。
最近後輩がまた増えて張り切っている。
ひゃく「ちよ」の妹で、大好きな姉の後を追って神座神社にやってきた。
早く姉のように立派な巫女になれるよう、日々のお勤めを頑張っている。
こや「ひゃく」、「ちょう」と常に一緒にいる巫女見習いの女性。
いつの間にか神座神社にいたらしく、その件については巫女長である「とめ」ですら把握できていないらしい。
ちょう「ひゃく」と同時期に巫女見習いとして働き始めた。慣れない仕事で故郷が恋しくなることもあるが、
良き同僚や先輩たちに恵まれて今日もお勤めを頑張っている。
ねね最近巫女見習いとして神座神社にやってきた女の子。
まだまだ遊びたい盛りの年頃で境内の掃除をサボっては「とめ」に怒られている。
とめ個性豊かな他の巫女たちを束ねる最年長の女性。
最近はよく仕事をサボろうとする「ねね」に手を焼いている。
七之助神座神社の宮司。巫女長である「とめ」と共に、他の職員を取りまとめながら神社の管理を行っている。
甘いものが好き。
勘十郎神座神社で神職見習いとして働く男性。今まで女性との関りが少なかったためか、
女性の多い今の職場で日々どぎまぎしながら働いている。
六兵衛神座神社の禰宜。宮司の「七之助」の下で諸々の補佐を行っている。
真面目で細かすぎる性格なためか巫女たちからは少々煙たがられている。

神座神社の朝は、ひんやりとした山の空気に包まれ、静かに始まる。境内には朝露が降り、石畳や木々の葉先に小さな水滴が光を受けて輝いていた。大きな鳥居を抜けると、清らかな空気が神社を守るように満ちている。古木が立ち並ぶ参道には、長い年月を感じさせる苔がしっとりと覆い、まるで時間がゆっくりと流れているかのようだ。

巫女見習いのさなは、朝早くからお勤めの準備に余念がない。まだ慣れない手つきで祭壇の前に立ち、静かに祈りを捧げる。彼女の瞳には、遥か離れた故郷の姉の姿が映り、少しばかりの不安と懐かしさが入り混じる。けれども、その小さな体に秘められた決意は揺るがない。立派な巫女になるという夢のため、今日も神座神社での務めに励んでいる。

境内の端では、おっとりとした性格のゆきが、神社の掃除をしていた。ふと顔を上げると、木漏れ日の下で巫女仲間のりんとちよが笑い合っているのが目に入る。三人はいつも一緒にいて、まるで姉妹のように仲が良い。ゆきはそんな二人を微笑ましく見つめ、後輩たちの面倒を見ながら、心の中で穏やかな幸せを感じていた。

「ひゃく、ちょう、ちゃんとついてきてるか?」

りんが声をかけると、後ろから元気いっぱいのひゃくが飛び出してきた。彼女は姉のちよに負けないくらいの勢いで、巫女見習いとしての務めを頑張っている。ちょうは少し恥ずかしそうに笑いながら、ひゃくに続いて現れた。彼女もまた、神座神社での新しい生活に少しずつ慣れてきているが、それでも時折、故郷を思い出しては寂しさを感じることもある。

神座神社の一角で、遊び盛りのねねが掃除をサボって境内を走り回っていた。彼女はまだ幼く、務めの合間にも遊びたくて仕方がない。そんなねねを見つけた巫女長のとめは、眉をひそめて叱りつける。

「ねね、またサボってるのかい!これだから困ったもんだよ…。」

とめの厳しい声に、ねねは慌ててほうきを持ち直し、掃除を再開するが、その目は依然として遊びたい衝動で輝いていた。とめはため息をつきながらも、そんなねねをどこか可愛く思っている。

一方、社務所では宮司の七之助が、巫女たちの賑やかな声を聞きながら甘い菓子をつまんでいる。彼の隣では、真面目で几帳面な六兵衛が厳しく書類を整理していた。六兵衛の細かさに巫女たちは時折困惑するが、その真剣さが神社を支えていることは皆が理解している。

そんな神座神社の日常は、静かでありながらも生き生きとした命に満ちている。ここで働く巫女たちや神職たちは、それぞれの個性を活かしながら、今日も変わらぬ一日を過ごしている。山深い神社に響く笑い声と祈りの声が、風に乗ってゆっくりと広がっていく。それはまるで、神座神社そのものが生きているかのように、静かで穏やかながらも、確かな存在感を放っていた。

中原之大桜

佐助各地で数多の御神木を病から救ってきた。樹医の腕を買われて「源次郎」たちによってこの地に招かれる。
彼曰く、樹木の声を聴くことができるらしい。
源次郎御神木が病気にならないように管理する樹医の男。
畏哭によって御神木が穢されることに心を痛めている。
まつこの地まで「佐助」を追ってきた女性。
過去に死にかけていた所を助けてもらった恩があるらしいが、彼は覚えていないらしい。
武左衛門樹齢千年越えの大樹があると聞き、物見遊山で訪れた武芸者。
畏哭が出現した際に華麗に打ち取り自身の武勇伝にしようと目論むも、返り討ちに遭ってしまったらしい。
さよ最近巫女修行のために神座神社へ行ってしまった妹の「さな」のことが気がかりな毎日。
妹からの手紙が届く日は一日中そわそわしている。
とく樹医である夫の「源次郎」を陰ながら支えている。
仕事とはいえ夫が穢れた御神木に近づくのが心配でならない。

春の光が山々を照らし、日差しが中原之大桜の大樹を温かく包み込んでいた。樹齢数百年を誇るその桜は、まるで古の守護者のように堂々と立ち、その枝を大空に向かって広げている。薄桃色の花びらがそっと舞い落ち、静かな森の中に淡いピンクの絨毯を作っていた。

朝の静寂を破るように、村の奥から少し早めに目を覚ました樹医の佐助が、手に木の杖を持ち、じっくりと大桜に近づいていく。その足取りは確かで、枝のひとつひとつに優しく触れながら、まるで木々と会話をしているかのようだ。彼の目は、木の葉のひとつひとつが発する微細な変化を捉え、樹木の声を聴く力を持っているという。

「どうか、穢れがありませんように…」

佐助は小さな祈りを捧げながら、さりげなく手を伸ばして葉の裏を見つめる。その姿を遠くから見守る源次郎は、神妙な面持ちで彼の作業を眺めていた。源次郎自身も樹医としてこの大桜を大切にしているが、佐助の技術にはひたすら感心するばかりだった。畏哭による穢れがこの桜に及ばぬよう、彼の心もまた固く守られている。

近くでは、まつが静かに花びらを掃き集めながら佐助の動きを見守っている。彼女の顔には感謝と懐かしさが浮かび、彼が無邪気に話しかけるたびに、彼女の心は温かくなる。しかし、佐助はその恩を覚えていないようで、まつの胸にちょっぴりの寂しさを残していた。

「お世話になったこと、覚えていらっしゃらないでしょうけれど…」

まつはそんな思いを抱えつつも、桜の花の下で手を動かし、自然の優しさを感じながら心の平穏を求めていた。

一方、武左衛門がその様子を興味深く見守っていた。彼はこの地に伝わる大樹の話に心を奪われ、武勇伝を作ろうと意気込んでいたが、眼前の桜の神秘的な存在に圧倒され、思い通りにはいかない様子だ。彼はひっそりと、桜の木に触れる勇気も持てずにただ立ち尽くしている。

さらに、村の片隅では、さよが手紙を待っていた。妹のさなからの便りが届く日を心待ちにしており、彼女の心は少しの不安と期待でいっぱいだった。手紙が届くと、さよの表情は明るくなり、まるで春の陽光のように輝く。

とくはその様子を静かに見守りながら、源次郎が桜の木に近づく姿を心配していた。穢れた御神木に近づく夫の姿を見て、彼女の心は不安でいっぱいになるが、それでも支え続ける決意を持っていた。

中原之大桜の下で繰り広げられるこれらの小さなドラマは、桜の木が見守る中、春の穏やかな日々に溶け込んでいく。樹木の声が風に乗ってささやき、桜の花がそっと微笑むように、村の人々もまたその日常の中でお互いを支え合いながら、静かに時を刻んでいく。

荒雷渓谷

忠左衛門漁に出た際に嵐に巻き込まれ死にかけた過去をもつ。
その際に「あま」の夫によってその命と引き換えに助けられ、
以後「あま」たち家族の助けになることを心に誓った。
庄三郎漁で使う道具を作るのを生業としている。荒れやすい荒雷渓谷で漁をするため仕方ないとはいえ、
すぐに道具を駄目にしてくる漁師たちを𠮟りつけている。
清兵衛亡くなった父の代わりに母を支えるため、立派な漁師になれるよう日々仕事を頑張っている。
母親譲りで素潜りが上手い。
あま早逝した夫の代わりに息子二人を女手一つで育てる肝っ玉母さん。
村で一番素潜りが上手いため、湖が穢れる前までは村の漁獲量に貢献していた。
さや同時期に「あま」から素潜りを教わった「清兵衛」に対して、一方的に対抗心を燃やしている。
何かと理由を付けては突っかかっている。
いと姉の「さや」と共に素潜りで貝や魚を取って生計を立てている。
実は姉が「清兵衛」に気があることに気付いている。
彦六天候が荒れやすい荒雷渓谷を熟知している年配の漁師。
若手の漁師育成に力を入れるとともに、荒雷渓谷の恐ろしさを語り継いでいる。
勘太産まれた時にはすでに父がいなかったためか、父親代わりとりて「忠左衛門」に懐いている。
彼のように立派な漁師になるのが目標

荒雷渓谷の朝は、霧に包まれた幻想的な風景から始まる。渓谷を流れる川の水面は、霧の中に溶け込んでおぼろげに見え、山々の間にうっすらとした白いベールがかかっている。山の中腹から湧き上がる霧は、渓谷全体をしっとりと覆い、時折風が吹くと、まるで白い絨毯が舞い上がるかのようだ。

村の人々が活動を始めるのは、まだ朝陽が山の端にわずかに顔を出した頃。忠左衛門は、毎朝のように早くから海に出る準備を整えていた。彼の眼差しには決意と、過去の苦い記憶が宿っている。嵐の中で助けられたことを心に刻み、今度はその恩を返すべく、慎重に漁の道具を整えている。嵐の予兆を見極める目は鋭く、波間に潜む危険を感じ取っている。

「清兵衛、今日も頼むぞ。良い漁ができるように、しっかり準備しろ。」

忠左衛門の声が静かな渓谷に響き渡る。清兵衛は母の教えを受け継ぎ、素潜りに精を出しながらも、しっかりとした漁師を目指している。霧の中から顔を出す彼の姿は、まるで自然の一部のように溶け込んでいた。彼の瞳には、漁師としての誇りと、亡き父の面影が浮かぶ。

その頃、あまは木の陰から息子たちの様子を見守りながら、漁の準備を進めていた。彼女の眼差しは、母親としての優しさと、漁師としての自信が混じり合い、村の漁獲量を支えてきた。あまの指先には、熟練の技術と長年の経験が宿っており、彼女がひとたび素潜りに出れば、その熟練の技が水中で光り輝く。

一方、さやはあまの教えを受けた清兵衛に対して、何かと対抗心を燃やしている。霧の中で彼女がふと目を細め、清兵衛の姿を鋭く見つめる。その表情には競争心と嫉妬の入り混じった感情が渦巻いており、どこか虚ろに映る水面と同じように、彼女の心もまた曇りがちだ。

いとは姉のさやと共に漁の準備を進めていたが、姉が清兵衛に抱く気持ちに気づいていた。彼女の心は、姉を支えながらも微かに揺れ動く感情に翻弄されている。彼女たちの漁は、自然の力と同じくらいに複雑で、時には心の葛藤が渓谷の静けさに反響する。

霧が少しずつ晴れていく中、彦六は年季の入った顔をさらに険しくしながら、若手の漁師たちにその知識を授けていた。彼の話には、渓谷の荒々しい気象と、漁の難しさが詰まっており、若者たちはその話に耳を傾けながら、自らの運命と向き合っている。

また、勘太は父親代わりの忠左衛門に憧れ、その背中を追い続けている。彼の目は、忠左衛門が作り上げた信頼と尊敬の証であり、その姿を見守ることで、彼もまた漁師としての道を進んでいる。

荒雷渓谷の朝は、霧と山々に包まれた神秘的な光景と、村人たちの忙しい営みが交錯する時間であり、それぞれの心の中で織りなされるドラマが、静かに、しかし確実に流れている。

霧竹村

三郎右衛門かつては武芸者として横柄で粗暴なふるまいを繰り返していたが、
草花を愛する妻の影響で今ではだいぶ物腰が柔らかくなったらしい。
善九郎正義感が強く村内の警備を自ら買って出ている。よく揉め事を起こす村人たちの対応に追われ疲弊気味。
しかし、村の平和のため今日も彼は頑張る。
久作かつての父のように荒々しい性格。誰彼構わず突っかかっては喧嘩をして、
「仁兵衛」が割り込んでくるまでが彼の日常。
藤吉霧竹村の御意見番。豊富な知識と経験で村のことであればなんでも分かるが、
妻の機嫌だけは分からないらしい。
稲太父譲りの力強さと母親譲りの草花の知識で畑作に勤しむ次男坊。
自分が作った作物を両親や村の人たちが喜んで食べてくれることが一番の幸せ。
よね夫に似て正義感が強く、村の警備に協力している。男性に引けを取らない腕っぷしの強さで、
他の村人の農作業にも積極的に協力している。
つき霧竹村の御意見番。豊富な知識を持ち、村のことで分からないことはないらしい。
夫が吐いた嘘もすぐに分かるとのこと。
まち草花をこよなく愛する女性。村に咲いている花は全て彼女が世話をしている。
夫とは真逆な人柄だったためか、嫁いできた当初は色んな人から心配されたらしい。
仁兵衛血の気が多く喧嘩が大好き。
村の中で揉め事が起きると祭りだと言わんばかりに自ら首を突っ込んでいく。
耕ノ助母に似て土いじりが好きな三男坊。のんびりとしており争いごとを好まない性格。
将来は植物学者になるのが夢。
又八農作業に心血を注ぐ男性。野生動物に畑が荒らされないように毎夜見張りをしているが、
結局寝てしまっているらしい。
こちよ夜の人通りが少ない村でのんびりするのが好き。
「又八」が畑の見張り中に眠ってしまっているのをよく見かけている。

霧竹村の朝は、霧に包まれた静けさの中で始まる。村全体が白いベールに覆われ、木々の間からわずかに差し込む朝陽が、霧をほんのりと黄金色に染め上げる。家々の屋根には露が煌めき、石畳の道を歩く村人たちは、その静けさに包まれていた。

三郎右衛門は、妻まちの影響で大きく変わった男だ。かつての粗暴さは影を潜め、今では草花に囲まれた庭で穏やかな時間を過ごしている。彼は、まちが育てた花たちを眺めながら、心の奥底から湧き上がる安らぎを感じていた。特に桜色の花が風に揺れる様子には、彼の心が深く引き込まれている。

「これが、君の花の力か…」

三郎右衛門は、まちが笑いながら手入れしている花々を見つめ、その美しさに心を奪われていた。まちの手には土が残っているが、その目は優しさに満ちていた。彼女が村の草花を育てる姿は、もはやただの趣味ではなく、村の心を癒す大切な役割を担っている。

一方、善九郎は今日も村の平和を守るために奮闘していた。彼の目は鋭く、村内の揉め事に対処する姿は、まるで霧の中の光のように頼りにされている。道端で見かけた小さな喧嘩にも素早く対処し、その真剣な表情には村への愛情が込められていた。

「ちょっと待ってください!ここで揉めても何も解決しませんよ!」

善九郎の声が、霧の中にこだまする。その背後で、久作が口論を続けていたが、仁兵衛が横槍を入れようとしているのが見える。仁兵衛は、まるで祭りのように騒ぎを楽しんでいるようだが、善九郎の真剣な姿勢には気づかずにいる。

また、稲太は畑の中でひとり、力強く土を耕していた。彼の手には、泥にまみれた作物が次々と収穫され、そのたびに笑顔が浮かぶ。作物が育ち、村の人たちに喜ばれることが彼の幸せであり、その思いが彼の農作業に力を与えていた。

「今日も元気に育ってくれたな。」

稲太は、収穫したばかりの野菜を見ながら、満足げに頷いた。彼の目の前には、母のまちが育てた花たちが、自然と調和しながら風に揺れていた。

霧の中で散歩をするつきと藤吉の姿も見られる。藤吉は村の知識を持ち、村の問題を解決するために奔走しているが、妻の機嫌についてはまるでお手上げだ。つきの目は、藤吉の不器用さに優しく微笑みながらも、彼の知識と実務のバランスを保つために気を使っていた。

「藤吉、もう少しゆっくりしてもいいわよ。」

つきの声が霧の中に溶け込む。藤吉はその声に微笑みながらも、何かしらの問題が心に残っているようだ。

また、こちよと又八の姿が見られる。こちよは畑の見張りをしながら、又八がつい眠ってしまう姿を見つめている。彼の寝顔には、村の静けさが溶け込んでおり、こちよの目には彼を見守る優しい気持ちが感じられる。

「また寝てるのね…」

こちよは、小さくため息をつきながらも、夜の静けさと安心感の中で、ゆったりとした時間を楽しんでいる。彼女にとっても、この村の生活が何よりの幸せなのだ。

霧竹村の朝は、静けさと共に人々の様々な思いが交錯する時間であり、その穏やかな風景には、村の人々の心が見え隠れしている。霧の中で織りなされる日常のドラマが、静かに、しかし確実に、村の歴史を紡いでいく。

鳴沢大風穴

すゑ鍾乳洞管理を任されている一族の一人娘。
参道の一部となっている鳴沢大風穴と参拝者との関係性に目を付け、
洞内の鍾乳石を観光資源にできないかと画策している
千代松頂上への参拝者が暗い鍾乳洞で迷わないよう案内するのが生きがい。
参拝者から巷の面白い話を聞くのが趣味。
株吉鍾乳洞の保全事業に従事している。
自分の仕事に誇りは持っているが暗い場所が苦手なので、毎朝葛藤している。
梅二郎探検家として姉の「くめ」と共にこの鳴沢大風穴を探検している。
暗くて危ない洞内をどんどん突き進んでいく姉に対して、いつもひやひやしている。
伊之助鍾乳洞内で変わった形の鍾乳石を見つけて名前を付けるのを密やかな楽しみにしている。
最近命名した鍾乳石を「すゑ」が勝手に観光資源化しようとするので困っている。
くめ弟と共に鳴沢大風穴内を探検している。新たに発見した鍾乳石のほとんどが「伊之助」によって
命名されていることに悔しさを感じている。
久介鍾乳洞の管理を任されている一族に入婿として迎えられた男性。
ひかえめな性格で行動力のある妻に振り回されがち。
安兵衛鍾乳洞に生息する生物を調査しにきた学者。
各地で調査をした生物を図鑑にまとめて出版しており、そこそこ売れているらしい。

夜の帳が降り、鳴沢大風穴の入り口に静寂が広がる。辺りは深い霧に包まれ、月光が鍾乳洞の入り口を淡く照らし出していた。洞内からはひんやりとした冷気が流れ出し、参拝者たちを迎える。

洞内には、鍾乳石が静かにたたずむ。長い年月をかけて形成されたそれらは、どこか神秘的な魅力を放っている。その中でも特に目を引くのが「すゑ」が考えた観光資源になるかもしれないと思っている、奇妙な形をした鍾乳石たちだ。

「これをどうにかして観光資源に…」と、すゑは考えながら鍾乳石を見つめる。彼女の手には、観光パンフレットの下書きがあり、その中には洞内の鍾乳石の名前や形状、そしてそれにまつわる話がぎっしりと書かれている。すゑの目は輝き、洞内の静けさの中で新たな可能性を夢見ている。

その傍ら、千代松が参拝者たちに鍾乳洞の案内をしていた。彼は老練なガイドで、洞内の迷路のような通路を熟知している。洞窟の中で微かな囁きのように響く水の音が、彼の声に調和し、参拝者たちに安心感を与える。

「こちらの通路を進むと、天井に奇妙な形の鍾乳石がありますよ。」千代松の説明に、参拝者たちの目が輝く。その中に紛れて、「つい最近見つけた珍しい鍾乳石」についての話が耳を引く。千代松は、洞窟内のあちこちに隠された逸話を聞き、村の中で語り継がれる小話を収集することが趣味なのだ。

一方、洞内の暗がりでは、梅二郎とくめが探検を続けている。梅二郎は姉のくめと共に洞窟の奥深くに進む中で、ひやひやしながらも興奮を隠せない。くめはその先に待つ未知の世界に胸を躍らせ、梅二郎はその背中を見守りながらも心の中で「どうか無事でありますように」と祈っていた。

洞窟の奥、薄暗い場所では、伊之助が新たな鍾乳石の命名に奮闘していた。「この形はまるで…」と、彼は石を見つめながら言葉を探している。その間にも、くめが新しい発見を報告してくるたびに、伊之助は心の中で微妙な葛藤を抱えている。姉に対抗心を燃やしながらも、彼の命名に対する情熱は揺らぐことはない。

久介は、管理を任された鍾乳洞の入り口付近で静かに仕事をしている。彼のひかえめな性格と、行動力のある妻であるすゑの影響で、洞窟の管理が日々忙しくも充実している。洞内に響く水音に耳を傾けながら、彼は穏やかな気持ちで一日を終えようとしていた。

その夜、洞内に響く水の音と共に、安兵衛が新たに発見した生物の観察を行っていた。彼の手には、各地で集めた生物の図鑑があり、鳴沢大風穴で見つけた新しい生物たちもその中に記録されるだろう。安兵衛の眼鏡越しに見える新たな発見の数々は、彼の熱意を物語っていた。

霧竹村の静かな夜に、鳴沢大風穴の中では人々の情熱と夢が交錯している。その神秘的な空間の奥深くには、まだ多くの秘密が隠されていることだろう。人々が作り上げるこの空間の物語は、時が経つにつれて新たな伝説へと変わっていくに違いない。

山裾宿

はる四季姉妹の四女。姉たちに甘やかされて育ったせいか、わがままな性格。
村で一番かわいいのは自分だと自負している。
なつ四季姉妹の三女。姉妹の中で一番気が強く相手が男でも物怖じしない性格だが、
実はお化けが苦手という一面も。
あき四季姉妹の次女。食べることが何よりも好きで、どれだけ食べても太らない体質。
最近別の村に気になる男性がいるらしい。
ふゆ四季姉妹の長女。個性豊かな妹たちに振り回されて気苦労が絶えない毎日だが、
何だかんだで幸せを感じている。
清八自警団の副団長。幼馴染で気の強い「なつ」とは言い争いがちだが、なんだかんだで仲が良い。
畏哭が襲撃した際、彼女を庇い畏哭の手にかかってしまった。
畝吉自警団に参加している青年。意中の人である「あき」に最近思い人ができたという噂を聞き、
その日はやけ酒したらしい。
新三郎自警団に最近入った若手団員。村で一番かわいい「はる」に思いを寄せており、
自警団に入ったのも彼女に良い所を見せたいという下心のため。
徳兵衛町内の自警団を率いており、畏哭の襲撃の際にも最前線で抵抗していた。
「ふゆ」の夫でその愛妻っぷりは町内でも有名。

山裾宿の夕暮れ時、静かな村の空気は、日が落ちると共に少しずつ青みを帯び始めた。山の影が長く伸び、村の景色を柔らかく包み込む。山々は夕陽に染まり、その色合いが空に溶け込みながら、心に残る穏やかな風景を作り上げていた。

村の中心に位置する広場では、四季姉妹の長女、ふゆが真っ先に村人たちに声をかけていた。彼女の声には、穏やかで親しみやすい響きがあり、村の人々も自然と引き寄せられていく。ふゆの細やかな心配りは、村全体に安心感をもたらしていた。

その広場の一角では、四季姉妹の四女であるはるが、自分の美しさをアピールするために振る舞っていた。彼女は華やかな着物を揺らしながら、周囲の視線を引き寄せることに余念がない。ふゆの前でさえ、はるは堂々と自分の姿を見せつけ、村の人々に笑顔を振りまいていた。彼女の自信満々な態度は、時折周囲の人々を楽しませる一方で、わがままさを隠しきれないこともあった。

「本当に、今日の私の髪型は完璧だと思わない?」はるが高笑いしながら、周囲の賛同を求めると、村人たちは苦笑いしつつもその言葉に応じる。彼女の気まぐれな性格は、時に村の賑やかさを引き立てているのだ。

一方、自警団の副団長である清八は、広場の隅でじっとたたずんでいた。彼の表情には少しの緊張感が漂い、村の安全を守るための責任感がにじみ出ている。幼馴染のなつとの言い争いもあったが、彼の心の中では常に彼女のことを思いやっていた。彼は、日々の任務をこなしながらも、村の人々を見守っている。

広場の近くに立っていた畝吉は、村の飲み屋の片隅で、先日の出来事を思い返していた。あきに対する思いが募る中、別の村の気になる男性についての噂が耳に入ってきた日、彼は酒に溺れながら、自分の感情を整理しようとしていた。普段は冷静な彼が、酒に酔いしれる姿は、彼の内面の葛藤を物語っていた。

夕陽が沈む頃、新三郎は広場の隅でひとり、もじもじとした様子で立っていた。彼の視線の先には、村の人気者であるはるが楽しそうに談笑している。彼は自警団に入った理由が、彼女に良い所を見せたい一心だった。内心ではどうしても彼女に認められたくてたまらない様子が見受けられた。

また、村の道を歩いていた徳兵衛は、夕食の準備に忙しい家に帰る途中だった。彼の姿は、毎日の労働を終えた後のほっとした表情が漂っている。彼の夫婦仲の良さは村の人々にとっても微笑ましいものであり、徳兵衛の優しさと愛妻家ぶりは、村人たちの心にも温かさをもたらしていた。

山裾宿の夕暮れは、静かでありながらも人々の営みが交錯する場所だった。広場に集う人々の笑い声や、互いの会話がこの空間に溶け込みながら、日が暮れるにつれて夜の帳が降りていく。村の人々の生活が、山々の静寂の中で一層美しく映える瞬間だった。

大参道

すい幼い頃から姉と共に舞の腕を磨き上げてきた。
舞の楽しさと奥深さを村人たちに教えたいという使命感に燃えており、その熱意が空回りしてしまうことも。
つる夫の「久兵衛」と共に頂上の社の管理を任されている。
夫や長女たちによる末娘への過保護っぷりに日々頭を悩ませている。
久兵衛霊石が祀られている社の管理を任されている一族の家長。娘たちを溺愛しすぎるあまり、
長女に婿を迎え入れる際も、一波乱あったらしい。
伊兵衛腕っぷしが自慢の若き武芸者。経験の浅さから自身の実力を過信した無謀な行動を取りがちで、
よく「穂右衛門」に諫められている。
せん舞の名手の姉妹。元々は妹の「すい」と共に各地を巡り舞を披露していたが、
この山の美しさと人々の暮らしに惹かれて定住することに決めた。
孫三郎祭祀に関する伝承を記録する一族の末裔。祭祀の内容を後の世に語り継いでいくため、
一族が描き記した絵巻はそれぞれの村に奉納されるのが習わし。
ひめ両親や姉から蝶よ花よと育てられてきた箱入り娘。
温室育ち故の突拍子もない発言で周囲を驚かせることもしばしば。
はな父に負けず劣らず、妹である「ひめ」を溺愛している。妹に悪い虫が付かないように父と共に目を光らせており、
最近は夫まで巻き込む大規模なものになっている。
米吉神座神社から「はな」の元に婿入りしてきた神職の男性。
気弱な性格と生来の人の良さから、面倒事によく巻き込まれている。
穂右衛門霊石が鎮座する頂上の社を防備するために派遣された武芸者。
知識と経験から冷静に対処する能力に長けており、「伊兵衛」の良き先輩となっている。
くに「孫三郎」の元で絵を学ぶ傍ら、祭祀の補助も行っている女性絵師。
幼い頃に見た、とある浮世絵が彼女を絵の道へと進ませるきっかけとなった。
又助「久兵衛」の一家の下で住み込みで働いている青年。
末娘の「ひめ」に気があるが、「久兵衛」が恐ろしくて口が裂けても言えないでいる。

霧のように立ち込めた静けさの中、山裾に広がる大参道は昼下がりの陽光に照らされ、深い緑に包まれていた。参道を取り囲む杉の木々は、時折さわさわと風に揺れ、木漏れ日が地面に幻想的な模様を作り出していた。

参道の一角では、すいと姉のせんが静かに舞を舞っていた。すいの手足は軽やかに空を舞い、姉のせんはその後ろで優雅な動きを見せていた。彼女たちの舞は、村の人々にとって心を癒すひとときであり、舞が流れるごとに周囲の時間も穏やかに感じられた。

すいの表情には、舞の楽しさを村全体に広めようとする熱意が溢れていたが、時折その熱が空回りしてしまうこともあった。それでも、彼女の舞には村の人々が自然と引き寄せられ、彼女のエネルギーが会場を包み込む様子は見事だった。

参道の先には、霊石が祀られた社の入り口が見える。つると久兵衛は、その神聖な場所の管理に忙しく取り組んでいた。つるは、娘たちの過保護な父親ぶりに頭を悩ませながらも、参拝者に対して丁寧に対応し、霊石の清めを行っていた。久兵衛は、神聖な場所を守るために周囲を警戒しながら、まるでその土地に溶け込むように静かに立っていた。

一方、参道の道筋にある茶屋では、孫三郎が祭祀の伝承を記録するための準備をしていた。彼の手には、色とりどりの絵が描かれた巻物があり、その絵巻は村の祭りや儀式の重要な記録として受け継がれていた。孫三郎の姿は、村の伝統を守るための真摯な努力を象徴していた。

参道の近くで、若き武芸者の伊兵衛が訓練をしていた。彼の力強い動きは周囲に緊張感を与え、その姿を見守る穂右衛門は、冷静な眼差しで後輩の動きを見守っていた。伊兵衛は、自身の実力を過信しがちで、時折無謀な行動を取ることがあるが、その意欲は決して否定されるべきものではなかった。

そして、午後の光の中で、ひめが遊び心満載の言葉を口にして、周囲の人々を驚かせていた。彼女の温室育ちの発言は、村の人々にとっては時に驚きと楽しさをもたらすものであり、その純真さがどこか微笑ましかった。姉のあきと共に見守るつるは、その愛らしい妹の言動にたまに頭を抱えることもあったが、彼女の存在が村の空気を和ませていた。

山裾宿の午後は、豊かな自然と人々の営みが織り成す調和の時間だった。参道に流れる穏やかな風と、舞の音色、そして村人たちの笑顔が、この場所を一層魅力的にしていた。夕暮れが迫る中で、すべての要素がひとつに溶け合い、平穏で美しい瞬間が広がっていた。


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